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ケンドリックは伝説化も・・・大失敗に終わったグラミー賞2016
どうも。


いや〜、本当にダメだったなあ。





グラミー賞2016。もうね、こんなにダメだったの、僕が2011年に速報生ブログはじめて、なかったことですね。


それもなんか変なんですよね。特にこの5年くらいは、ノミネートも結構批評家よりというかインディ的なものが増えていて、今年もノミネートの時点ではそんな感じだったし、当日のパフォーマンスも、バラエティには富ませなながら、要所要所で実力派でしっかり固めていく感じがあったのに、今年はパフォーマンスが全然ダメでしたね。


なんか、攻めていく感じが見られなかったんだよなあ。たとえば、去年なんかはいきなりはじまりがAC/DCだったりしたし、ミック・ジャガー出て来たり、ポール・マッカートニーやボブ・ディランが出て来たりと、ロックの大御所でしっかりシメるとこシメといて、若手のアーティストのしっかりしたとこで「おっ、やるねえ」とうならせる効果もちゃんとさせてた。いくら人気が先行したところで、たとえばブルーノ・マーズやビヨンセなんかをかませるとパフォーマンスはちゃんとしまったものになるし、ジャック・ホワイトとかアーケイド・ファイア、ブラック・キーズみたいなタイプが出ると、やっぱ、「グラミーなんてポップなメインストリームどこしか出ないんだろ」と思ってるような層もちゃんと引き込める上に、「今のロックも捨てたもんじゃないねえ」と年配の人に思わせる力もあるし。


 今年もその計算ももちろんあったとは思うんですけど、本当に功を奏したのはこれだけでしたね。





やっぱ、どう考えてもケンドリック・ラマーしかないでしょ!





 彼のことは一昨年に、イマジン・ドラゴンズとのマッシュアップ共演で、ものすごいスキルの畳み掛けるラップを聴いた時から「これはすごいニューカマーがヒップホップに登場したな」と思ったものですが、今回のこのミニ・ヒップホップ・ドラマは最高でしたね。ラップの聴感的には、あの、リズムに合わせるラップをするのではなく、縦横無尽の延々と止まらずに泉のように滾々と沸き上がるライムフローにバックトラックが自然とあっていく(なんかジャズのモード奏法みたいですけどね)あの手法が、ジャズとソウルとロックとアフリカのトライバルなリズムが一体化したサウンドに乗り、しかもリリックは、刑務所のどん底から、自分の黒人としての根源的なアイデンティティに真正面から向かい合いながら、最終的には希望へと昇華していく力強いドラマとしてしっかりポエティックにストーリーテリングされ、それがちゃんと視覚を伴う形でダンスの肉感的躍動感も伴って表現される。ここまで考えられた演出はないし、もう、ここまで行ったら「総合黒人アート」の域ですよ、これ!



 このパフォーマンスがあった年に、彼がヒップホップ部門を独占するだけで終わって、アルバム・オブ・ジ・イヤーが取れなかったことは後年、責められるように語られることになると思いますけどね。昨日のグラミー・パフォーマンスに関して言えば、どのメディアも満場一致でケンドリックのこのパフォーマンスをベストにあげていましたね。これは、あまりに最高すぎました。ある、硬派系のアメリカの黒人のキャスターは「カニエよ。本当はキミがこういうことしなきゃいけなかったんだぜ。カーダシアンなんかにうつつ抜かさないでさ」とまで言い放ってたんですけど、本当にさもありなんです。


こんな風に、ことケンドリックに限って言えば、今年どころか5、10年単位でもベストクラスのパフォーマンスでした


が!


今年、ここまで良かったのが、ケンドリックしかない!!


これが残念なんだよなあ〜。ベテランのすごい妙味で押し切って聴かせるものもないは、「これは思わぬ収穫だぞ」と思わせるニューカマーも少なかった。入れこもうと思えば出来ないことはなかったのに、あえてやらなかった感じがするんだよなあ。なんか、下手にノミネートの傾向とは違うような、ポップなとこに出演者固めて、あえて品格落としてた感じがしたんだよなあ。


 たとえば、エリー・ゴールディングと、おそらく共演はリアーナのはずだったと思うんですけど、あの代役の人との中途半端なデュエットなんて、リアーナのドタキャンも悪いんだけど、エリーのデビュー時から改善されない歌の弱さで台無しになってた。あんなのいらないですよ。あと、カントリーのサム・ハントも弱かったなあ〜。ああいうのがパフォーマンス・スロットの無駄駒使いになってましたね。


 今年の場合、ポップなところでのキャッチーな見せ場がテイラー・スウィフトだったり、ウィーケンドだったりと、ライブでのパフォーマンス・アピール自体がそんなに強くないアーティストでしょ。だから、なおさら、周囲を固めるには実力派を持ってこなくちゃいけなかったのに、なんか若い視聴者にこびたような、ポップ系の若いとこで固めてましたからね。別にジャスティン・ビーバーを責めたいわけじゃなくて、真面目に音楽に取り組んだステージを見せたのは好感こそ持てましたけど、パフォーマンスでの説得力に関しては正直まだ役不足な感じはいなめなかったし、他の若いポップなシンガーたちもギャフンと言わせるようなものがなかったですからね。デミ・ロバートとかも頑張ってはいたけど貫禄がないし、メーガン・トレイナーは新人賞取ったけど、心もとない感じだったし、せいぜいトリ・ケリーとかリトル・ビッグ・タウンのリードシンガーの女の子といったとこでしたけど、彼女たちも上手いんだけど、肝心なカリスマ性に欠けるのもアピール不足につながったし。


 そんなこともあり、本来期待がかかったのはこの人だったんですけどね。





アデルですね。本当ならこの日、歌でもっとも注目を集めなきゃいけなかったのは彼女だったんですけど、かわいそうなことに音声トラブルが歌っている途中で発生して、音声メチャクチャになったんですよ。





 で、おそらくアデル自身の耳のモニターが聞こえてなかったんじゃないかな。必要以上に力んで大きな声で歌おうとするあまり、声がうわずって叫び気味になっちゃったんですね。で、無理して出してたものだから、後半になると声がくたびれてきちゃって、ピッチまで乱れることにもなったりして。これは見てて気の毒でしたね。


 それから、アデル同様に、歌でのド迫力を期待されていたアラバマ・シェイクスのときも、正直、音声がいまひとつだったんですよね。本来、その夜の屈指の評判にならなきゃ行けない彼女たちが本領発揮できなかったわけですからね。こりゃ、パフォーマンスの点数が落ちても無理はないですね。


 そして、ここ最近の物故者の多さ故に注目されたトリビュートものでしたけど・・・






いやあ〜、ガガ、こんな風に気合いを入れて来たのは良かったものの・・・


まあ〜、ひどいものだった!!!!!!!!!!


いやあ、これがねえ〜。なんか、アラジン・セインのときの山本寛斎の衣装まで着たのも「コスプレかよ」と思ったんですけど、


宝塚のミュージカルを安っぽくしたみたいにしか見えなかったぞ!!!


 なんかですね、ヅカの人も、たとえばポップスを歌うなんて企画でいざ歌ってみたりしたら、朗々と歌いすぎちゃって、肝心なリズムが8とか16に全くノレない、ということが多々あるものなんですけど、この日のガガがまさにそうでした。




 このパフォーマンスがねえ〜。アメリカ人の書き込み見てても、絶賛してる人はしてるんですよ。でも、それがもう明らかにガガの信者みたいな人たちで、ボウイのことを昔のファッションでしか知らない感じの人なんですよね。あと、ここんとこ、ガガがトニー・ベネットとのデュエットだったり、「サウンド・オブ・ミュージック」のカバー、アメリカ国歌とか、そういうのを歌わせて「うまい」と言わせてきた実績があったから、「やっぱ、ガガは歌がうまいなあ」と流れで言わせてるようなとこもありましたね。


 ただ、ボウイの古くからのファンみたいなタイプで、これを評価してる人はせいぜい1〜2割で、ほとんどが酷評の嵐でしたね。よく言われてたのが「これじゃライザ・ミネリ」「安っぽいヴェガス・ショー」というものが大半で、やっぱり日本でいうとこの「ヅカ」の感じなんですよね。だから、全然ロックンロールに聞こえないんですよ。


 加えて、ブツ切りにしてメドレーにしたせいで、1曲でのトータルでの物語性で聴かせるボウイ・ナンバーが台無しになっちゃってるんですよ。これも痛かった。ぶっちゃけ





グラミー前日にやったプレパーティでニルヴァーナの残党がベックをヴォーカルにプレイした「世界を売った男」のカバーの方がよっぽどしみるんですよ。この曲はニルヴァーナの「MTVアンプラグド」でもカバーされてた曲でもあるんだけど、そこにボウイとカートの接点が見出せもするし、ロックファンの心を文句なしにつかむことが出来たのにね。


 あとのトリビュートも、なんかなあ〜。モーターヘッドのレミーに関しては、アリス・クーパーやジョニー・デップ、ジョー・ペリーらのハリウッド・ヴァンパイアーズがやったんだけど、正直、ただの普通のカバーの域を出てなかったし、このバンドの営業をかけたようにしか僕には映らなかったですね。セッション形式でやれば面白かった気もするんですけど。あと、ボウイでさえグラミーはあんまり評価して来ていなかったのに、ましてや本来かなりマニアックなはずのモーターヘッドのトリビュートというのは、グラミー的にどうなのかな、という違和感もありました。


 あと、イーグルスのグレン・フライはイーグルスのメンバーに、「Take It Easy」の共作者のジャクソン・ブラウンが入るという、その頃のファンの方にしてみれば心温まる演出でしたけど、演奏がなんか力弱かったんだよなあ、これ。実際、これに関しての外国人の投稿も読みましたけど、ノスタルジー系以外の反応で見ても必ずしも絶賛ではなかったし、リアルタイムずれてる人のウケが悪かったですね。わかります。ちょっと、演奏がフニャフニャしてましたからね。で、あとで知ったことなんですけど、ラインナップにグレン・フライと不仲だったドン・フェルダーがいなかったんですね。これもファン側としては残念な要素だったかもしれません。


 逆にスティーヴィーワンダーとアカペラのペンタトニックスとの共演でのアース・ウィンド&ファイアのトリビュートはスティーヴィーの声が抜群に良かったので好感が持てたんですけど、いかんせんこれがステージ・パフォーマンスじゃなく、スピーチ台での即興みたいな感じですごく短かったんですよね。モーリス・ホワイトの死があまりにも直前だったので間に合わなかったのかもしれないですけどね。


 そんな中、唯一気をはいたトリビュートはBBキングのものでしたね。





 これは良かったですよ。カントリーの新鋭のクリス・ステイプルトンに今のブルースの継承者であるゲイリー・クラーク、そして御大ボニー・レイットの絡み。伝統継承の芸なんだけど、全然古色蒼然としてなく、今にしっかり通用する出来にしてあったのはさすがでしたね。少なくとも僕はこれでクリス・ステイプルトンとゲイリー・クラークのアルバムを聴いてみたくなりましたが、本来トリビュートというのは、こういう発見をさせないといけないものなんです。


 こんな欲求不満のグラミーです。最後までグダグダです。結果知ってるんだったら、最後は一昨年まで最後の発表だった最優秀アルバムでテイラーのスピーチ締めにした方が絶対にカッコよかったのに、中途半端に、この日、全然出番のなかったマーク・ロンソンとブルーノ・マーズでシメるという謎のオチになり、最後は、全くの意味不明のピットブルの登場でしょ(笑)。混迷としか言いようがなかったですね。


 なんか、僕の邪推に過ぎませんが、音楽至上にこだわりたいグラミーの運営側の気持ちを、放送側のCBSが制限しちゃって、それですごく半端な内容になってしまったのか、という感じがしましたね。そんなことしたから、視聴率はかえって落ちたというのにね。来年以降は、ここ数年の良かった傾向をまた思い出して、しっかり音楽で聴かせるアワード・ショーを是非やってほしいものです。







 
author:沢田太陽, category:アワード, 11:34
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Comment
余談ですが、クリス・ステイプルトンはカントリーミュージックアワードでジャスティン・ティンバーレイクと共演しています。この共演がお互いの良さを出し切ってて最高でした。クリスのうまさにはもちろん、こういう場にでもしっかり実力が出せるジャスティン・ティンバーレイクの上手さにも驚嘆します。こういう共演が今年のグラミーにはなかったかもしれないですね。
https://youtu.be/qFD9ObuLoOM
haru, 2016/02/17 6:43 PM









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