「週刊新潮」2月18日発売号が、闇から闇に葬られた殺人事件に関する死刑囚の“告白”を掲載している。
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2014年12月に死刑囚・矢野治(67)から「週刊新潮」編集部宛てに一通の手紙が届いた。矢野は指定暴力団、住吉会の幸平一家矢野睦会の前会長で、2003年に起きた「前橋スナック銃乱射事件」の首謀者として死刑判決を受けた身である。
〈前略、お手数をお掛致します。(中略)多分、平成6年頃のことと想います(※編集部註・平成10年の記憶違い)。警察が調べれば直ぐにわかります。法の改正で時効にはなっておりません。この処、毎晩のようにリュー一世(斉藤衛)の夢で苦しんでおります。このようなことを書き記すことは、私の立場が悪くなることを承知で書かねばならぬ心情を察してください〉
自責の念を打ち明ける書き出しの手紙には、自らの手による殺人が記されていた。
〈(前略)事前に○○組長(手紙では組名明記)に頼んで檻を事務所内に入れてもらっていたので、リューは○○組に入るなり直ぐに檻に入れてます。(中略)私個人の考えでリューの首を絞め殺しました〉
文中の「リュー一世」、本名・斎藤衛とは、当時現役の参議院議員だった友部達夫氏が100億円近い資金を騙し取り、その一部は政界に流れたといわれる「オレンジ共済事件」のキーマンとして、国会の証人喚問を受けた人物。斎藤は友部のために政界工作を行い、参院選当選を助け“永田町の黒幕”と呼ばれていた。証人喚問の1年後に行方をくらまし、〈国会に証人喚問…会社社長、謎の失踪半年 工作語らぬまま〉との見出しで、その動静が報じられたこともあった(『毎日新聞』98年10月20日付夕刊)。この時既に、矢野死刑囚によって殺害されていたことになる。
この“永田町の黒幕”を葬り、そして死体遺棄を命じた顚末が、矢野死刑囚の手紙に綴られていたというわけである。「週刊新潮」では、手紙にて“死体遺棄役”とされていた矢野睦会の元構成員に接触。遺棄に関わる克明な証言を交え、事件の全貌を特集する。
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告白は刑執行を先送りするための、捏造と疑うこともできる――しかし、証言を真実と確信するに至った「もう一つの殺人」の存在も明らかになった。そちらの殺人事件も「週刊新潮」にて続報する予定だ。
「週刊新潮」2016年2月25日号 掲載
新潮社
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