ニンジャスレイヤーの戦いは第一部の対ソウカイ・シンジケート、第二部のザイバツ・シャドーギルドを経て、第三部に至り、新たな邪悪なるニンジャ組織を相手にしています。組織の名はアマクダリ・セクト。ラオモト・カンの実子であるラオモト・チバをトップに戴く謎のニンジャ集団ですが、その実権を握る実質のトップは、謎めいたニンジャ、アガメムノンです。
表向きはネオサイタマ知事の秘書「シバタ・ソウジロウ」として奥ゆかしく立ちまわる彼は、一体何者なのでしょうか。
「無力で愚かなモータルには、今の世界は複雑すぎる」
◆アガメムノン◆
アマクダリ・セクトの摂政にして、最高幹部「12人」の一人。憑依ニンジャはゼウス・ニンジャ。雷を武器として自在に操る事ができる。デン・スリケン、デン・ヤリ、エネルギードレインなどの能力を持つ。
外見的特徴
身長データの詳細は不明(ニンジャスレイヤーやダークニンジャよりも長身)。しなやかに鍛え上げられた均整の取れた肉体、褐色の肌、ギリシア彫刻めいて整った容貌の持ち主。瞳には冬の嵐めいた稲妻のパルスが輝く。ブロンドの髪を後ろに撫でつけている。白いスリーピースのスーツを着ている事が多いが、紋付き袴、着流し、カフスシャツとループタイを合わせたスタイル、エマージェント作業服など、登場のたびになにかと服装が描写されがちである。
戦闘スタイル、能力
ジツ:カラテ比率=不明。
その実力は現在のところ作中でごく僅かに明かされたのみである。カラテによって電力を手足のごとくコントロールする「デン・ジツ」を用いる。飛び道具としては、電力を凝縮して放つ「デン・スリケン」が極めて強力。デン・スリケンは致命的なエネルギー塊であり、これを受けた相手はニンジャであろうと一撃で消し炭と化す。
そのほか、彼自身の身体を発生源とした周囲へのアーク放電や、脳神経を電気的に刺激して思いのままに操る洗脳、付近の人間の思考パルスの読み取りなどが確認されている。周囲の環境から電力を吸収し、己のジツを瞬間的にブーストする事がしばしばある。彼自身の体内パワーリソースの量は不明である。
遭遇時の対処方法
まず勝てません!
自分の力を他人の前でおおっぴらに示す機会を殆ど作らないアガメムノンですが、それは決して彼の戦闘能力の不足が原因ではありません。
アガメムノンに白兵戦を挑んだニンジャは、デン・ジツによってほぼ何も出来ず倒されてしまっています。稲妻のエネルギーに捉えられたものはそのまま空中に釘付けにされ、デン・スリケンの的となり、滅ぼされます。あるいは脳神経をいじられ、洗脳されてしまう可能性があります。洗脳されてしまったニンジャはマシーンのように命令を遂行する存在に成り果てます。犠牲者の生体エネルギーを電力に変換、吸収してしまう事もできるようです。
アガメムノンは表向き穏やかなネオサイタマ市民としてのペルソナを纏っているので、この点に賭けてください。彼は極めて合理的な思考で生きています。彼との間に利害関係さえ発生しなければ、生きながらえる事は十分可能です。
あるいは、あなたがもし、非常に強力かつ厄介なカラテ戦士であれば、「今あえて戦いを挑めばかえって組織運営上の大きな障害が生じる可能性が高い」と判断させる事で、結果的に一時をしのげるかもしれません。ただし、その場合は後々の決戦を覚悟してください。
アガメムノンに敵対した場合、ネオサイタマで生きることそれ自体が非常に困難なものとなるでしょう。社会のシステムそのものが貴方に対して牙を剥きます。可能であればどこか遠くに逃亡しましょう。
オリジン・エピソード
ニンジャスレイヤー ゲイシャ危機一髪! (キョート殺伐都市 # 2)
- 作者: ブラッドレー・ボンド,フィリップ・N・モーゼズ,わらいなく,本兌有,杉ライカ
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/エンターブレイン
- 発売日: 2013/08/31
- メディア: 単行本
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「ゲイシャ危機一髪!」内に収録されている書籍書き下ろしエピソード「ライズ・オブ・アマクダリ」は、アガメムノンがいかにしてラオモト・チバの窮地を救い、新組織「アマクダリ・セクト」を立ち上げるに至ったかが克明に描かれた重大なエピソードだ。
ラオモト・カンの死に乗じてネオサイタマに襲撃を仕掛けたザイバツ・シャドーギルドの攻勢下、アガメムノンはラオモト・チバと共に智謀を巡らせ、猫の額ほどの小さな「領土」を確保することに成功する。
居丈高に不平等条約を押し付けるザイバツ・シャドーギルドの総督ワイルドハントに、ほんの僅かな兵力で対抗しようとするチバとアガメムノンの苦闘が見どころだ。勃興期のアマクダリ・セクトは駆け引きと度胸と決断の連続だったのだ。
重要エピソード
ニンジャスレイヤー 秘密結社アマクダリ・セクト (不滅のニンジャソウル # 1)
- 作者: ブラッドレー・ボンド,フィリップ・N・モーゼズ,わらいなく,本兌有,杉ライカ
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/エンターブレイン
- 発売日: 2015/04/16
- メディア: 単行本
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アガメムノン率いるアマクダリ・セクトは第三部の主敵であるので、あなたは第三部の第一巻「秘密結社アマクダリ・セクト」を手にするべきだろう。
NINJA FACTS
臥薪嘗胆? 深甚な陰謀? 長い雌伏の背景にあるものとは
第一部「ネオサイタマ炎上」の終盤で、彼は既に物語に登場している。ラオモト・カンが政界進出をもくろみ、市長選に立候補した際、対立候補であったサキハシ氏の秘書として、選挙運動を行っている姿が記録されている。
「ドーモ、シバタ=サン」事務所へ訪れた支援者が男にオジギした。そのままノレンをかきわけ入っていく。シバタは携帯IRC通話機を指でなぞった。「……ドーモ。ああ、……ああそうだ。問題は起こらない。どう転んでも、長い目で見れば上手くいくようになっている。そう。そのまま進めるように」
— Ninja Slayer (@NJSLYR) 2011, 4月 30
何かを企んでいる。悪そうだ。
「ドーモ」ドアがノックされ、黒スーツの男が入室した。「ドーモ」シバタは顔を上げた。テレビモニターには「しばらくお待ちしてください」とだけ書かれた青いスクリーンが映っている。黒スーツの男はテレビを一瞥したのち、小声で報告した。「フォレスト・サワタリの反応をトレスできなくなりました」
— Ninja Slayer (@NJSLYR) 2011, 5月 26
「そうか」シバタは無感情に頷いた。「ヤツがどこまで役に立ったのか知る由も無いが、サイオー・ホースとしよう。所詮は狂人だ。せいぜい好きに動いて死ねばよい」「テレビは」「実際、想定外だ。大変な混乱が起こっている。ニンジャスレイヤー……敵に回せば恐ろしい相手となろう」
— Ninja Slayer (@NJSLYR) 2011, 5月 26
最終決戦のおりにラオモト・カンのトコロザワ・ピラーへ潜伏していたフォレスト・サワタリの反応を、アガメムノンはトレスしていた。サワタリは何らかの財宝目当てでピラーに侵入していた。ということは、サワタリを誘導し、侵入を手引したのはアガメムノンという事だろうか。
結果的にサワタリはニンジャスレイヤーとかち合い、色々あって重油プールに沈む事になったが、アガメムノンが彼におそらくは虚偽的な情報を与え、何らかの工作を行わせようとしていたのは間違いない。選挙の時期にそのような……裏工作のにおいだ。
ラオモト・カンはニンジャスレイヤーによって倒され、アガメムノンが仕えていたサキハシ氏は見事ネオサイタマ知事に就任した。アガメムノンはサキハシの全幅の信頼を得ており、それを表社会での地位拡大の足がかりとした。一方で、アマクダリ・セクトの組織強化を進め、様々なニンジャ組織を吸収し、力を蓄えていった。
逆の見方をすれば、第一部時点における彼は、実行力を持たぬ弱小勢力の徒にすぎない。炎上するネオサイタマでラオモト・チバを救出した際、アガメムノンに付き従うニンジャはドラゴンベインとスワッシュバックラーただ二人だけであったようだ。そこから、じわじわと勢力を拡大していったのだ。
……彼は何者なのだろうか? そして、何が目的なのだろうか?
邪悪なるニンジャ組織、アマクダリ・セクト
ネオサイタマのニンジャ勢力図
第一部
ソウカイ・シンジケートの一強状態↓
第二部
ザイバツ・シャドーギルドによる植民地支配
ごく一部、アマクダリ・セクトの支配領域↓
プレ第三部~第三部初期
分断された群雄割拠時代
ザイバツ・シャドーギルドが滅ぶと、ネオサイタマの闇社会は群雄割拠時代に突入した。アマクダリ・セクトの母体は、ラオモト・チバのもとに集まってきたソウカイ・シンジケートの残党ニンジャと、アガメムノンが集めた少数精鋭の戦士だ。
セクトのニンジャはこの時点で質において他の組織を凌駕しており、規模の小さいニンジャ集団同士がしのぎを削る混沌期を制した。制圧した小規模ニンジャ集団をそのままフランチャイズ的な衛星組織として組み入れる事で、必要以上のコストをかけず、短期間で勢力を拡大する事に成功。同時に、衛星組織ごとの情報の共有を敢えて困難にし、反乱の芽を摘んでいったと思われる。
ザイバツ崩壊後の日本ではある事情からニンジャソウルの憑依現象が急増しており、アマクダリはそうした状況下、新たに出現した強力なニンジャ存在を抜け目なくスカウトしてゆく事で、ますますその力を盤石のものにする。
第三部の進行と共にアマクダリ・セクトは急速にその力を強め、巨大幹部「12人」を擁するに至る。ソウカイヤは闇のヤクザ戦士の色彩が強かったが、アマクダリは表社会の企業にニンジャを役員として送り込む等、積極的に政財界のシステムに食い込んでいった。当初ソウカイヤの残党を中心にしていた組織構成はじわじわと変貌し、ラオモト・チバの権力は抑制され、ますますお飾りのものになっていった。
ところで、このイラストレーションは見たことがない
「初めて見たぞ!」「どういうこと!?」そう思った貴方は鋭い!
これは3月末に発売される物理書籍新刊で使用されるカラーイラストレーションなのだ。そのティーザーめいた初出しである。物理書籍最新巻の正式タイトル等は数日以内に明らかになるだろう!
未来へ
見方によっては、アガメムノンの歩みは、出自のはっきりしない在野のニンジャによる、豊臣秀吉や劉備玄徳めいたサクセス・ストーリーだ。しかしその結果としてアマクダリ・セクトがネオサイタマにもたらしたのは、特別警察機構ハイデッカーによる市民社会の抑圧、相互監視、メディア・コントロールのディストピアであった。彼の野望は尋常のものではない。
02以降では、彼のその陰謀、その正体の一端について、更に明らかにしていく事ができるかもしれない。
(Tantou)