元祖人気アニメシリーズ「ドラえもん」のマンガ第30巻で、ドラえもんは現代の日本にそっくりな世界に連れていかれる。そこは、明らかにおかしな状況のなか、最も長く眠った人が最も尊敬される世界だ。16日からスタートした日本のマイナス金利政策(NIRP)は、この世界とどこか似たような場所へ我々を連れていってしまった。
■マイナス金利に対応できないコンピューターシステム
NIRPの奇妙さは、至るところに転がっている。例えば、不動産投資信託(REIT)のGLP投資法人が野村証券と交わした借入金に関わる金利スワップ契約だ。GLP投資法人は4700万ドルの借り入れについて、年間約5000ドルの金利を受け取る。また、マネー・マーケット・ファンドは、運用会社からNIRPの適応除外を求める声がある中、新規の購入停止や繰り上げ償還が相次いでいる。さらには、ゆうちょ銀行が突如、「安定的な運用ができない」との懸念を理由に「JP日米国債ファンド」の販売取りやめを決定した。
メガバンクの少なくとも2行が、コンピューターシステムがマイナス金利に対応できないと認めたときには、その不安な事態を想像できたにすぎなかった。
■指数連動型の投資が悪化の要因
しかし、日本の根本的な状態がよりおかしかったことは、NIRPのかなり前から明らかだった。東証に上場する株は、単に価格を基準として取引されるようなコモディティー化が進み、貪欲な日本の個人投資家は、純資産9000億円の日経平均株価指数に連動するレバレッジ型の上場投資信託(ETF)を世界で最も取引高の多い投資信託に押し上げた。かなり目を見張る光景だ。先進国の2000社以上で構成される東証は最近、あるストラテジストが「ばかげている」と説明し、ほかのストラテジストがもはや説明がつかないと認める状況の中で乱高下している。東証株価指数(TOPIX)は1週間のうちに13%下落し、その後結局1日で8%の上昇に転じた。
この動きの背景には数多くの要因があるが、とりわけ(日本に限ったことではないが)債券や株式、原油、為替などの間で高頻度取引(HFT)や人工知能を活用したアルゴリズム取引による相関性が高まっていることがある。しかし、それを許容してさえも日本は他に類を見ないほど相反する二つの見方に振れやすい。つまり、見かけ上はたいした理由もなく、アベノミクス、円や中国に対して、あるときは評価したり―そしてあるときは手を引いたり―する。この多くは、取引の75%を占める外国人投資家の仕業のようではあるが、個人投資家が好むレバレッジ型のETFは、明らかに事態を悪化させる要因だ。
ドラえもんは結局、居眠り運転の車の事故に巻き込まれたのを機に、眠りをあがめる世界から戻ってくる。日本の投資家たちも、手痛い形で教訓を学ばなければならないかもしれない。
By Leo Lewis
(2016年2月17日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
(c) The Financial Times Limited 2016. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
世界を目指す、全てのビジネスパーソンに。 ビジネス英語をレベルごとに学べるオンライン学習プログラム。日経新聞と英FT紙の最新の記事を教材に活用、時事英語もバランス良く学べます。
元祖人気アニメシリーズ「ドラえもん」のマンガ第30巻で、ドラえもんは現代の日本にそっくりな世界に連れていかれる。そこは、明らかにおかしな状況のなか、最も長く眠った人が最も尊敬される世界だ。16日から…続き (2/17)
タバコの反対運動をほうふつとさせる運動で業界への逆風が強まっている中、炭酸飲料を最も大量に消費するアジアの一部の国は、炭酸飲料への課税を準備している。
5600億ドルの規模を持つ世界の炭酸飲料水業界…続き (2/17)
マイナス金利政策(NIRP、negative interest rates policy)は、しっかり守られている秘密に少し似ている。隠されている間はよいが、より一般に知られるようになると効き目が弱…続き (2/16)