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フォルツァ総曲輪 9月末 上映休止 独立系、社会派9年間で幕 富山市などシネコン誘致で

9月で映画の上映が休止となるフォルツァ総曲輪=10日、富山市総曲輪で

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 富山県内唯一のミニシアターとして市民や映画ファンに親しまれてきた富山市総曲輪のフォルツァ総曲輪が9月末で映画上映を休止する。6月に近くの再開発ビルでシネマ・コンプレックス(複合映画館)が開館するのを受け、市と運営する市出資の第三セクター会社「まちづくりとやま」が判断した。9年間にわたり館を支えたファンからは惜しむ声が上がりそうだ。(松岡等)

 フォルツァは、市中心部から映画館が次々に廃業した二〇〇七年二月、閉館後の映画館を活用してオープン。当初はまちなかで映画を見られる環境を維持しようと、市民有志らが運営する公設民営の施設としてスタートした。現在は市の補助金を受けて「まちづくりとやま」が運営している。昨年の補助金は千五百四十四万円。

 大手配給会社の配給映画がメーンのシネコンとは一線を画し、欧州やアジア、国内の独立系プロダクション製作作品や社会派のドキュメンタリーなどを年間約百二十本上映。近年は映画館としての認知度も上がり、開館当初は年間約九千人ほどだった入場者数も昨年は一万五千人ほどまで増えていた。

 昨年は塚本晋也監督の「野火」など話題作を上映。富山県氷見市出身でドキュメンタリー映画の鎌仲ひとみ監督や「箱入り息子の恋」をヒットさせた同県射水市出身の市井昌秀監督ら地元ゆかりの映画人からも評価を受け、俳優の井浦新さんや安藤サクラさんらも出演作上映時に館を訪れた。

 客席は百七十六席。一四年、主流となっているデジタル化に対応するため、約四百万円かけてDCP(デジタル・シネマ・パッケージ)導入、最新の配給作品に対応できる態勢も整えていた。

 フォルツァは、ほかに音楽や演劇などができるライブホールや、絵画などのカルチャー教室も運営しているが、これら事業も合わせて休止する見通し。今後、施設を貸し出すなどの活用方法を検討していく。

 金沢市では「シネモンド」が有限会社として、運営には行政などの補助を受けずに同様のアート系映画を上映する。

 土肥悦子代表は「フォルツァのようなミニシアターとシネコンでは上映する映画の種類が全く違う。映画の多様性を支える場が失われるのは残念だし、カンヌやベルリンなどの国際映画祭で賞を取るような作品が見られなくなるとしたら、他都市との文化的格差も生まれる。街の人たちのためにも行政がサポートするべきではないか」と話した。

 

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