前編で自分の枠を広げるための方法や好きなことだけをする秘訣をお話くださった小澤さん。後編では、後輩や部下との付き合いかたについてさぐっていきます。
6. 仕事を依頼するときには本質的な意味を伝える
多くの起業家にアドバイスするときは、何のためにこの仕事に取り組むべきか?という仕事の意味を伝えるようにしています。野球で例えるなら、なんのために練習をするのか。甲子園に出たいから素振りをするのと、ただ素振りをするのでは素振りの意味が変わってきますよね。目標もなく素振りをするより甲子園に行くほうが嬉しいし、だったら素振りをたくさんしたほうがいいなと納得できる。ゴールまでの道筋を全部説明しないまま「ただ素振りやろう」と言われても人は誰も動かない。
指示する側としては「素振りしておけ」と言ったほうが楽。ですが、本当に部下のことを思うなら粗末な指示はすべきでない。利益を1億つくろうという数字面だけにこだわってもおもしろくないし、部下の心にも響きません。
きちんと伝えるには話をすることが一番です。一緒にやるチームメンバーとは事あるごとに話をするようにしています。読者の皆さんもメールやメッセージのやりとりが多いと思うのですが、気をつけたいのはコミュニケーションの流量。多ければ多いほどいい。多すぎるということはありません。
7. 夢を持つ
魅力的な夢を持つことは本当に大切。そもそも夢がなければ、素振りをする理由がなくなる。500回の素振りの先に、甲子園という夢が繋がっていることが重要なんです。その人にとって魅力的に感じるものだったら、夢の大小は関係ありません。
ですから好きじゃないのにやらなきゃいけない仕事というのは存在しないと思っています。たとえ朝8時に出社しなければいけなくても、お客様からお叱りの言葉を受けたとしても夢があると思うからできる。バカな上司がいても、こんな仕事をやる意味ないと思っても、基本的にはそれをやらないと夢にたどり着けないと思えば乗り切れること。
それに夢さえあればなんでも乗り越えられます。死にもの狂いで仕事をし、会社で時間を使うのは、仕事をやり遂げたら面白いと思うから。それだけでいいんです。
今していることが夢とつながっているかつながっていないか、それだけ
8. 大きな夢につながる小さな目標をセットする
夢までの道のりをつくってあげることもマネージャーの役割のひとつ。その人の能力より一段上の目標を据え、小さな達成を積み重ねた先にゴールがあるような設計図を描きます。
物事を達成した瞬間は誰だって嬉しいと思うもの。ですからその日だったり一週間、一ヶ月で達成できる目標を話し合って作り、喜びと成長を共有するといいでしょう。
あわせて夢の見せ方も工夫しましょう。次の目標はあと5回素振りをすれば達成できる。そしてその延長線上に甲子園、つまり夢がある。夢をつかむためにいつなにをやったらいいかの方向性を示し、うまく導くのもまたマネージャーだと思います。
9. 後進の表情を見る
僕が投資するかどうかは2つのポイントに照らし合わせて考えます。事業内容とその人の表情です。投資は慈善事業ではなくビジネス。どういう事業をしたいのか、細心の注意を払い見ています。内容がすっとぼけていたりすると、さすがにお金は出せない。
それ以上に重要視しているのがその人自身がどんな人かということ。20分、30分でわかることじゃないですが、表情や一生懸命やりそうかどうか見ていますね。人を見るときのポイントとして
素直な人柄 嘘をつかない 頑張れる強さがある
この3つを満たしていれば大丈夫だと判断しています。
逆に投資したあとに苦労しそうだなと思うのは、僕が自分の意見を言ったらすぐに「それはですね」と否定するような人。なんでも聞けというつもりもないし、言われてたしかにと納得するケースもあります。しかしいきなり人の意見を拒むのはとてももったいないです。ディスカッションの目的は意見対立じゃありませんから。僕が言ったことをすぐにかみくだけなくても「そうですね、ちょっと考えてみます」という余裕がほしいですね。
10. 自分の人生を真剣に考える
最後に前から感じていることをひとつ。
それなのに、どうすれば好きなことができるのかを考えずに自分の人生や仕事を杓子定規に解釈している人が多いです。ビジネスも一生懸命やれば成功する確率は上がりますし、起業の場合は成功の度合いが違う。「昇給して80万円になった」なんて喜ぶような、数十万円単位で物事を考える世界とは桁がだいぶ異なります。こんな世界があるんだから、みなさん自分の人生をもっと真剣に考えましょう。みんないくらでも可能性があって、能力があるのに愚痴を言いながら仕事している。それなら辞めればいいのにと思います。本当に真剣に考えて努力しているなら愚痴は出てきません。
好きなことをして生きたいなら、いかにしてお金を稼ぐかを真面目に考えるべき。でも、そう教えてくれた人は誰もいなかった。だから、一人だけでもそういうことを言う人間がいてもいいんじゃないかと思って、折にふれて自分が言うようにしています。
嫌なことが何一つなく、好きなことだけをして生きるっていいものですよ。
まとめ
心構えや生活習慣は5年後、10年後の自分をかたちづくります。地味な習慣でも、意識して毎日続けることが大事。この機会に、今一度自分の生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか。
小澤隆生さん
ヤフー株式会社 執行役員 ショッピングカンパニー長
1972年千葉県生まれ。1995年に早稲田大学法学部を卒業し、株式会社CSKに入社。1999年株式会社ビズシーク設立し、代表取締役に就任。2003年、ビズシークの吸収合併により楽天に入社。楽天イーグルスの立ち上げなどに携わった後、2006年に退社して小澤総合研究所を設立。2011年株式会社クロコスを設立、2012年には同社をヤフー株式会社に売却し、ヤフーに入社。2013年に同社執行役員・ショッピングカンパニー長に就任。




