*星空文庫

ハイスクール!ノーリターン!《ノベル版につき縦書き読み推奨》現在連載更新中

Tacci 作

ハイスクール!ノーリターン!《ノベル版につき縦書き読み推奨》現在連載更新中
  1. ハイスクール!ノーリターン! 第1話 「君との誓い」
  2. ハイスクール!ノーリターン!〜茜色の約束〜 第2話 「宣戦布告」

ハイスクール!ノーリターン!〜茜色の約束〜

#1「君との誓い」
#2「宣戦布告」

以下随時更新

#3「譲れない想い」
#4「裏切りの真相」
#5「ガールズ・トーク」


主要登場人物一覧

練祢 小百合(ねりね さゆり)・・・物語の主人公で、律とは幼なじみ。底抜けにアクティブな性格だが、恋にはちょっと奥手な女の子。律に対して密やかな恋心を抱くも、あと一歩踏み出せずにいる。声優研究会所属。

黒坂 律(くろさか りつ)・・・小百合の幼なじみ。思い込んだら一直線な不器用でアツい性格。将来の夢は作家、のはずだったが...ひょんなことから小百合とともに声優を志すことに。ラノベ研究会所属。

麦野 胡桃(むぎの くるみ)・・・チャーミングな容姿とは裏腹に、皮肉屋で気の強い一面を併せ持つが、根は優しく世話焼きな小百合の良き理解者。演劇部所属。

望田 清十郎(もちだ せいじゅうろう)・・・女性の扱いに長け、その物腰の柔らかさとフランクな性格で仲良し4人組のムードメーカーを務める。将来は俳優志望。演劇部所属。

ハイスクール!ノーリターン! 第1話 「君との誓い」

ハイスクール!ノーリターン!
第1話
「君との誓い」


 7月も中旬に差し掛かった、暑い夕暮れの河川敷。
 その日も私と律くんは、彼自身の書いたシナリオで、掛け合いの練習をしていた。
 夕涼みとは言え、二人とも熱を込めて演技し過ぎてしまって……。私はローファーを脱ぎ、律くんは学生ズボンの裾を捲り上げ、二人して鞍流瀬川に足を浸して涼を取っていた。
 茜色に染まる河川敷の石畳み……林から降り注ぐ蝉時雨……。
 すべてを鮮烈に覚えている。彼から切り出された言葉も……全部。



「絶対叶えようね、律くん……!」

「ああ、約束だぞ!」

「うん、約束。……あたしたち二人とも、お互い夢を叶えたら……やっと挑戦出来るんだね、その約束……!」

「そうだ。まぁとりあえず今はお互い、修行あるのみだな」

「うん……! 私、絶対に瑠璃野さんみたいな素敵な声優になるっ!」

「ああ、俺だって……!絶対すっげえ作家になって……作品をアニメ化してみせるっ!」

「うんうんっ……なんか今からドキドキするね……!」

「うん……!」

 わたしと律くんとは、幼馴染にして現在18歳の高校3年生。別に付き合ってるとか、そうゆう仲ではない……今のところ。
 それに律くんは鈍いから、きっとあたしの気持ちなんて……知らないだろう、多分。
 そんなこんなで、あたしたちは二人きりになると、もっぱら将来の展望や世間話ばかりなのでした……。

「律くんの原作がアニメになるとか……!」

「んでもって……! 小百合がそのアニメでヒロインを演じるとか……!」

《こ、これはっ……! 意気投合の匂い……! ぷぷんとですっ!》

「うんうん! すっごい楽しみっ!」

 私たちは、目をキラキラさせて同じ言葉を叫びました……。手を伸ばせば届く距離で笑っている律くん。そう、私は彼に想いを寄せていました……。でもなかなか切り出せなくて、もどかしい思いを多々これまでしてきましたが、それはそれで楽しい時間でもあって……。
 もし私の気持ちが通じたらなぁなんて……たまに考えたりするけれど……。もし告白に失敗して、それが原因で今の関係がギクシャクするのも怖くて……あと一歩踏み出すことが出来ないあたしなのでした……。

「あ、そういえばさ、今季アニメどれ見てる?」

「えとね……クロノ・サーカスかな」

「おお! 俺もそれ見てる! ヒロインの瑠璃野さん、めっちゃかわいいよな! マジ天使……! 結婚したいよ〜!」

「むっ……。で、でもでも! 主演の石田俊介さんだって超かっこいいもん! あたし、石田さんの声が一番好き! 誰かさんと違って、声にオトナの包容力あるし!」

「む……」

《こ、これはっ! ジェラシーの匂い! ぷぷんとですっ……!》

「ひょっとして……妬いちゃった?」

「な、なんで俺が小百合にヤキモチ焼くんだよっ!」

「ムキになるのが余計あやしい〜!」

「ちぇ……やっぱやめた」

「やめたって……なにを?」

「……さっきの約束」

「え……?」

 約束してからまだ間もないというのに……私の心にはその一言が、まるで世界の終わりを告げられたかのように重く響きました……。

「……なんで?」

「正確に言うと、変更だ」

「変更?」

「ああ。俺、作家にもなるし、声優にもなるっ!」

「……律くん」

「な、なんだよ……」

 彼からのまさかの一言に、私は鳩が豆鉄砲を喰らったように立ち尽くしました……。

「う、ううん……びっくりしただけ」

「うん。でさ、小百合と共演するっ! 俺の書いた原作で!」

「てゆうか……前の約束より、もっとハードル高くなってない?」

「いーの! 絶対すっげえ声優になって……石田俊介なんかよりもっともっとかっこいい声優になんの!」

「ふふ……律くんかわいい」

「ば、ばか! からかうなよっ」

「ううん、からかってない……。私たちの約束がもっと楽しみになったから……嬉しくってつい」

「な、ならいいんだけどさ……。よし、んじゃ今日も掛け合いトレーニングやるぞ」

 夕陽を浴びた彼のその笑顔が、いつもと少し違って見えたのはきっと……。

「律くん、声優目指す発言したからかな……なんか今までと目の色変わったね」

「ま、まぁな」

「今までは私に付き合ってくれてた感じだったけど……ふふ!」

「え……小百合と付き合う……?」

「なっ……! そそそそんなこと言ってない……!」

「だ、だよな? 悪りい、聞き間違えた……!」

「う、うん……」

 あまりの気恥ずかしさに、お互いの視線が忙しく泳いでしまいます……。うまく話を切り返せたら良かったのですが、こうなってしまうともう私はパニックです!

「……ごめん」

「べ、別に謝んなくてもいいよ……」

「そ、そっか……」

「うん……」

「よ、よし! じゃあやるぞ……あ、メールにシナリオ送ったからな! 見てくれよ」

「うん、えっと今回のシナリオは……タイトル、なになに、『イモート・コントローラー』……ふふふ! なにこのタイトル!」

「いや、シスコンブラコン兄妹の話。ちなみに、コメディじゃないぞ」

「え、そうなんだ?」

「おう。なんてゆうかあれだ、絆みたいなオチに持ってきたいなあって」

「あはは、了解。じゃああたしこの妹役ね」

「うん、俺が兄貴役な!」

「お兄ちゃん、お願いします……!」

「ははっ。ようし、今日も一丁やりますか!」

こうして私達は、いつものように掛け合いを始めるのでした……!


第2話へ続く



...................................................................................................


ハイスクール!ノーリターン!
第2話
「発熱の理由」

 私と律くんの掛け合い開始からおよそ10分。とにかくセリフの中に《お兄ちゃん》という言葉の多い役でした。周りには誰もいませんでしたが、もしこれを聞かれていたらなどと思うと、かなり恥ずかしいやり取りです……!

「お前のことは、お兄ちゃんが絶対守る……! こうして、兄妹の絆はより深まったのでした……」

「……はい、お疲れ様でしたぁ!」

「ふぅ、終わった終わった」

「なんとか演じられた気がする!」

「……うーん」

 個人的には、なかなか上手に二人とも掛け合い出来ていたように思いますが、どうやら律くんはそうでもないみたいです……はぅ。

「どしたの……?」

「いや……やっぱ小百合の声、存在感あるなって」

「え……本当に? 嬉しい」

「でもな〜! それに比べて、俺はダメだなぁ……ぜんぜんかっこよくない」

「そんなこと……ないと思う」

「はぁ。やっぱ俺なんか、声優とか無理なのかな……」

《こ、これはっ! 励ましてあげるべき匂い! ぷぷんとですっ……!》

「私はッ。律くんの声……」

「……ん?」

「好き、だよ」

「……熱でもあんのか? 小百合、顔赤いぞ? どれ…」

「ひゃっ! 律くん何をッ?」

「いや、熱ないか触っただけ」

 律くんの暖かい手のひらが、私のおでこに添えられていて……! これでは照れてしまって、更に顔が赤くなってしまいます……!

「うーん、やっぱお前熱あるんじゃないか?更に赤くなってきて…」

「も、もう大丈夫だよ! あはは……!」

「そか? ならいいんだけどさ……」

《こ、これは……。乙女のピンチの匂い! ぷぷんとですっ!》

「あっ! あーッ! そうだ! そういえばさ、今週末に公開収録あるんだよね! 律くん知ってるッ?」

「話が見えんわ! どこで何の収録?」

「あっうん、名古屋アニメーションがやってる声優スクール分かる?」

「いや、わかんない」

「うん……とにかく、そこのビルの一階にね、ガラス張りのレコーディングブースがあるのね。そこでなんと! クロノ・サーカスの公開生収録が行われるのっ!」

「マジかよッ! てことは…! 瑠璃野さん来んのッ?」

「むむ……。た、多分ね。わかんないけど、石田俊介さんは来るってネットで見た……!」

「む…。石田俊介、ね。へぇ……面白そうじゃん。まあ俺がこの目でどれほどの奴か見極めてやるよ」

「もう……律くん、石田さんを敵対視しすぎだよぉ……」

「べ、別にそんなんじゃねーし! 俺のお目当ては瑠璃野さんだもんね」

「むむぅ……何よ瑠璃野さん瑠璃野さんてデレデレしちゃって……。それはそれでなんか悔しいじゃないかぁ」

「はぁ? なんで小百合が悔しがるんだよ?」

《ま、またしても……! 乙女のピンチの匂い! ぷぷんとですっ!》

「あ、それはその……」

「よくわからんな、小百合は。まあいいや、んじゃ週末そこ行こうぜ」

「うん、じゃあ週末、だね」

「おう!じゃあ今日は解散な!」

「あっ……うん」

「あ、そうだ」

「な、なに…?」

《こ、これはっ! まさか告白の匂い……! ぷぷんとですか……っ?》

「お前、風邪っぽいみたいだからさ。お大事にしろよ! じゃあなっ!」

「あっ……行っちゃった。もう、律くんて本当鈍感! あたし一人で赤くなってバカみたいだよう……! あーもう律くんのバカ……! はぁ、帰ろ。夕食作んなきゃ」


 そして、お待ちかねの週末がやってきました…!


「律くん道に迷ってるのかなぁ……。もう収録始まっちゃうよ」

「あっ、いたいた! 小百合ーッ!」

「律くん! 良かった!間に合って!」

「悪い、ちょっと考え事してたら道に迷ってさ汗」

「ふふ、律くんらしいよう本当に」

 その時、レコーディングブースの前の人だかりが、なにやらざわつき始めたのです。

「始まるみたい! もっと前に行こう!」
「ちょ…小百合っ! 待てってぇ!」
「ふう、なんとか最前列ゲットです……!」
「あ、ああ。でもこれ……すし詰め状態だな」

「う、うん、そうだね……」

《ふぇぇぇ……! 勢い余って乗り込んだまでは良かったものの……! まさか律くんとこんなに密着することになるとは思ってなかったぁぁぁぁ!》

「おい押すなよ……ッ。まったくッ……。小百合、大丈夫か?」

「う、うん……」

《いやぁぁぁぁなにこの状態ッ! まるで後ろから抱きしめられてるみたいに……!どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう///》

「あ」

「え? ……ああっ!石田俊介さん来たぁぁぁぁ!」



第2話へ続く


................................................................................................

ハイスクール!ノーリターン!〜茜色の約束〜 第2話 「宣戦布告」

ハイスクール!ノーリターン!
第2話
「宣戦布告」



「あいつが石田…俊介か」

 その時、ブース脇に置かれたスピーカーから声が聞こえました。

「皆さんこんにちは! 本日はクロノ・サーカス公開収録にお集まり頂き、誠にありがとうございます!」

 品の良い仕立てのスーツに身を包み、爽やかなショートカットに柔らかい雰囲気の黒縁眼鏡…更に! 口元からこぼれる白い歯の輝きの眩しさに…! 女性ファンから黄色い声援が飛び交っています…!

「きゃ〜!石田さーん!」
「俊介く〜ん!こっち見て〜!」

「ち、大人気だな……。確かにルックスもイケてやがる」

「はぁ♥︎石田さん……素敵!早く生収録が聴きたいっ!」

「ふんッ……。さぁて、お手並み拝見といくか…!」

「暖かいご声援ありがとう! では早速ですが収録を開始していきますので、どうぞ皆さん、お静かに願いますね!」

「は〜い!」

「さっさと始めやがれってんだ」

「……もう律くんたら」

 収録を観覧しながら、横目に律くんの様子を伺ってみると……険しい目つきで石田さんを観察しています!あたしはと言えば、やはり憧れの人気声優を前にしてその圧倒的な実力、オーラを肌で感じ、黄色い声が出そうになるのをさっきから必死で抑えている次第ですぅぅぅ!


「はいっ! これにてクロノ・サーカス第4幕の収録が無事! 終了となりました〜! ご声援ありがとうございます〜!」

「キャ〜! 石田さん最高でした〜!」
「俊介く〜ん! まだ行かないで〜!」

「あはは、皆さん申し訳ありません……! 僕はこれからまた次の収録に行かなくてはならないのです〜! また皆さんにお会い出来るのを楽しみにしてますからねっ! それではご機嫌よう〜!」

「ああ〜ん! 俊介くん行っちゃった〜!」
「さあ帰ろ帰ろ〜」

「はぁ……ようやくすし詰めからの解放!しかも挟み撃ちでドキドキしてしまった〜!」

「挟み撃ち?」

「な、なんでもないようっ!それにしても石田さんの演技……!すごかったよね!」

「ああ確かに石田俊介は……最強かもしれん。くそう……」

「うんうん! 私も改めてそう思った〜!ってあれ? 律…くん?どこ消えちゃったの?」
《こ、これは…! 私…ッ…迷子の匂い…!ぷぷんとですっ…ふぇええ》


「ん? こんなとこにクロノ・サーカスのポスター貼ってやがらぁ」
《ちくしょう……実際に生で本人を目の当たりにしてどうだ。……石田俊介。なんて存在感たっぷりの声と演技! 実力派にしてあのルックス…! 俺みたいな小僧、勝ち目なんてねーだろ……!》

「そのポスター、良かったら持ってっちゃって」

「え……? いや、俺そうゆうつもりじゃ……って、ああっ!」

「やぁ。確か君、最前列で観覧してくれてたよね?」

「い、石田俊介だ……!」

 その時、俺は突然背後から誰かに声を掛けられた。どこかで聞いたことのあるような、知性を感じさせる男の声だった。

「そのポスター、良かったら持ってっちゃって」

「え……? いや、俺そうゆうつもりじゃ……って、ああっ!」

 声の主に返事をしようと振り返った俺は、そこに立つ男を見て我が目を疑った……!

「やぁ。確か君、最前列で観覧してくれてたよね?」

「い、石田俊介だ……!」

「正解! 君は?」

「あっ……えと、俺っ……黒坂律ですッ!」

「律くんか。あ、興味本位で伺いたいんだが、ちなみに君はクロノ・サーカスではどの声優のファン?」

「瑠璃野さんですけど……あ、そんなことより石田さんッ! まさかこんな風に話せるとは思ってなかったから……今! 言わせてもらいますッ!」

「ど、どうしたのそんな顔して」

「石田さん。俺はあなたに今日! 宣戦布告しますッ!」

「宣戦布告……?」

「はいっ!」

「なんでまた僕なんかに?」

「それはッ! ……俺の大好きなやつがッ! 石田俊介のことばっかりかっこいいって言うから! ……です」

「……。あっはっは! そっかそっか……そりゃ申し訳なかったね」

「べ、別に謝ってもらわなくていいですッ……! そんなの俺がッ! 将来あなたよりかっこいい声優になれば……! きっとあいつを振り向かせられると思ってますから!」

「そっか……まあ事情はよく分かった」

「絶対にあなたには負けませんから……! 俺と小百合は、あなたと瑠璃野さんよりもっともっとすごい声優になりますよ。……言いたいことはそれだけです、失礼します」

「律くんと小百合さん、だね」

「あっ……しまった」

「ちなみに、律くんと小百合さんは同じ学校かな」

「あ、はい」

「いや、実は僕も出身は愛知でね。ひょっとしたら律くんが自分の後輩だったり、なんて思ったものだから」

「そうだったんですね! え、石田さん母校どこすか?」

「神田高校だよ。律くんは?」

「神田すか! え〜! 隣町じゃないですか! あ、俺と小百合は桃栗山高校です!」

「ほう! それは面白い。僕の後輩じゃなく、まさか彼女の後輩だったとはね」

「彼女って…石田さんの彼女ですか?」

「あはは! 違う違う! 個人情報だから名前は明かせないが、知り合いの声優が確か、桃栗山の卒業生だったなって」

「え! 誰っすか〜! 気になる〜!」

「あはは、いやごめん。僕はプロフで出身校の公開してるけど。彼女はしてないんだ」

「そうなんすね……わかりました」

「うん、ぬか喜びさせてごめん」

「いえ」

「それにしても……恋か。青春だなぁ。律くんの今の言葉を聞いて、僕も懐かしい記憶が蘇ったよ」

「懐かしい記憶……ですか」

「うん。実はね、今じゃそこそこ人気者になったけど。昔はそうでもなかったんだ」

「え……そうだったんですか」

「ああ。僕にはライバルがいてね。そいつはすごい奴でさ、いつも僕の十歩先を進んでた」

「石田さんの十歩先?」

「伊達ツバキ役の古川慶一郎って分かるかい?」

「はい、石田さんと同じく大人気声優ですよね」

「うん。彼とは古い仲でね、学生時代からの付き合いなんだ」

「おお、そうなんですか!」

「うん。彼に負けたくない一心で、ここまで登り詰めたんだ。……今の僕があるのは、悔しいけど彼の存在があったからなんだよ」

「そんないきさつが……!」

「クロノ・サーカスのキャスト選考でも、彼とやりあった。そして見事、主演の座を勝ち取ったんだ」

「なんてハイレベルな闘いなんだ……!」

「今も変わらず、彼はすごい声優だよ。尊敬して止まないくらいにね」

「永遠のライバル、ってやつですね」

「ああ。バチバチに意識してガムシャラになってたあの当時は…僕も今の君みたいな目をしてた。……そんなことを思いだしてね。懐かしくなったのさ」

「今の俺みたいな……ですか?」

「うん。あ、そうだ律くん。差し支え無ければ伺いたいんだが、ちなみに君と小百合さんの通う高校ってどこだい?」

「え?」

「いや、実は僕も出身は愛知なんだよ」

「そうだったんですか!」

「そう。だから、ひょっとしたら君たちの通う高校のこと、知ってるかもなって思ってね」

「そうゆうことだったんですね……えっと、桃栗山高校です。俺も小百合も」

「ほう!桃栗高か!」

「えっ!まさか……」

「いや、僕の母校ではないんだが、知り合いに……」

「あっ、いた!律く〜ん!」

「ゲッ、小百合…!」

「ふふ、余談が弾んでしまったな。僕もそろそろ行かねば。……律くん」

「あっ、はい!」

「僕は逃げも隠れもしない。きっとここまで登っておいで」

「石田さん……!」

「その時は真剣勝負だ。僕も主演の座は譲らない!おっといかん。では失礼するよっ!」

「あっ!」


「もおお律くんたら! 突然迷子になっちゃうんだからああ! ……って、あれ? 今律くんが話してた人ってもしかして……」

「…ああ、石田俊介だよ」

「えええ! 律くん……? 失礼なこととか……言ってない……よね?」

「おう、心配すんなって。宣戦布告しただけだ」

「良かった〜! て……え? 今、宣戦布告って言わなかった……?」

「言った」

「はわわわ…! なんてことを…!」

「でも……思ってたより嫌なヤツじゃなかったけど、な」

「律くん…! それでそれで、他に石田さんとどんなお話したの⁉︎」

「……内緒」

「えぇぇ〜!なんでなんでなんで〜」

「安心しろって。ちゃんと小百合のことも伝えといたからさ」

「きゃあ! 律くん! ありがとう〜! え〜! なんて伝えたの?」
《こ、これは〜///私が石田さんの大ファンだって伝わった匂い…!ぷぷんとですっ!》

「うん。俺と小百合は将来、絶対に石田さんと瑠璃野さんよりすごい声優になりますよ、ってさ」

「な、なにそれ……。意味わかんないよ……? 嘘でしょ……? はわわわ。あたしが瑠璃野さんよりすごい声優になるだなんて言ったの……?」

「ははっ! そんな震えるほど喜んでくれるとはなっ!」

「……律くん、ビンタしてもいいかな?」

「え? うわぁぁぁっッなにすんだよ小百合ィ!」

「律くんのッ……バカバカバカバカバカバカ〜!」



第3話へ続く

『ハイスクール!ノーリターン!《ノベル版につき縦書き読み推奨》現在連載更新中』

『ハイスクール!ノーリターン!《ノベル版につき縦書き読み推奨》現在連載更新中』 Tacci 作

あらすじ キラキラと輝くハイスクール・ライフは、人生でただ一度きり。物語は、茜色に染まる河川敷で交わされた、幼馴染みの小百合と律の約束から始まる。それは、お互いの夢を叶えた先にある更に大きな夢。その過程で織り成される甘酸っぱい恋愛劇や試練に対する苦悩。二人の親しい友人である胡桃と清十郎らも、物語の展開の鍵を握る大きな存在。果たして、小百合と律は見事結ばれ、交わした約束は果たされるのか。誰もが抱いたことのある青春の淡い感情を、ひたすら眩しいタッチで描くリアル青春群像劇、ハイスクール!ノーリターン!〜茜色の約束〜。切なくも胸キュン必至なストーリーを、必ずやあなたにお届けします。

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2015-04-07
Copyrighted

Copyrighted (JP)
著作権法内での利用のみを許可します。