悪性リンパ腫(4)闘病生活 老境の役作りに
「隠とん生活」は4年続いた。人気女優だったとは想像できない、清貧の日々だった。やがて体力も回復し、還暦を迎えると、再び仕事が回ってきた。
復帰作は、大震災と原発事故をテーマにした映画「希望の国」。被災地の酪農家の妻で認知症という、今日的な課題を抱えた難しい役だった。
「自信がなくて、降板したくなることもありましたが、懸命に演じました。もう、女優として忘れられたと思っていたけど、また必要とされたことが、うれしかったんです」
この後も、尊敬する大女優の乙羽信子さん役や、大河ドラマなどに、相次いでテレビ出演した。
悪性リンパ腫との闘いで、人生を達観するようになった。「病気になると、一人で生と死を考える。体が弱ってきても、だれも私の痛み、心身の苦しみ、心の闇を取り除いてはくれない。自分が耐えるしかないのだ」と。この心境と体験が、老境の役作りに役立っている。
子どもは皆、成人。「一人で好きなように24時間過ごせるのが、楽しみです」。得意のハングルは、「頭の体操に良いので、続けていきます」。
おいしいものも口にせず、粗食で通している。無欲で、先々週、65歳になった。(文・斉藤勝久、写真・飯島啓太)
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(2015年4月16日 読売新聞)
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