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マイナス金利 経営圧迫懸念 金融庁、地銀のリスク投資を監視

産経新聞 2月17日(水)7時55分配信

 ■新たな資金需要促す

 金融庁が、日銀のマイナス金利導入で地方銀行などがリスクの高い資金運用を拡大しかねないと警戒感を強めている。地方経済の疲弊で融資先が減るなか、これまでは、日銀に預金して金利を確保できたが、今後は一定規模の預金に手数料がかかり、利ざやも稼ぎにくくなったためだ。金融庁は、地銀などが行き先を失った資金を外債などリスク資産への投資で補い、財務体質が悪化しないか調査・監視する方針だ。

 マイナス金利の導入を受け、金融庁は、地銀などを対象とした調査に乗り出した。システムの対応状況や収益、運用への影響を確認するほか、各種手数料の見直し方針なども調べる。

 金融庁が地銀の監視強化に乗り出したのは、マイナス金利が各行の経営を圧迫する懸念があるためだ。

 銀行は今まで、融資先が見つからない資金を日銀の当座預金に預けて金利を受け取ってきた。だが、16日からは新たな預金に対し手数料がかかる。また、市場金利の低下により、国債や貸し出しから得られる金利収入の減少も避けられない。

 経営体力の弱い地銀ほど大きな打撃を受けかねない状況だ。米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が15日まとめた試算によれば、地銀の本業のもうけを示す業務純益は、マイナス金利によって平成28年度に15%減ると推計した。大手行でも8%減るが、その2倍もの規模だ。

 地銀は大手行に比べ、海外融資や手数料収入の比率が低いため、影響が大きくなるという。信州大の真壁昭夫教授は、「大手のように海外展開ができず、その地域にしか基盤がない金融機関は苦しい」と指摘する。

 運用難による収益悪化を避けようと、各行は預金を増やさないようにするため、定期預金の金利を引き下げ始めた。京都銀行(京都市)や中京銀行(名古屋市)、九州フィナンシャルグループ傘下の肥後銀行(熊本市)など、全国各地で見直しの動きが相次ぐ。

 一方で、攻めの動きも出てきた。熊本第一信用金庫(同市)は、通常より金利を引き上げた新たな個人向け定期預金の取り扱いを10日に始めた。ただ、限られた顧客をめぐって競争が過熱する可能性もある。

 もし消耗戦になれば、高収益を求めて、リスクの高い外債や不動産向け融資などに投じる資金を増やす恐れもある。そこで損失を出せば、財務体質の悪化も進みかねない。

 金融庁は危険な運用をしないか監視をしつつ、地銀に対し企業の事業支援を通じて新たな資金需要をつくるよう促す構えだ。ただ、ある地銀の幹部は「企業の資金需要を掘り起こすのは難しい。じり貧の状況だ」と困惑している。

最終更新:2月17日(水)8時8分

産経新聞

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