「ユニコーン企業」の成長の仕組み

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日本でも、企業価値10億ドル以上の非上場企業を指す「ユニコーン」という表現が浸透し始めている。非上場の巨大企業が増加する状況は、どのような意味を持つのだろうか。上場のタイミングと企業の成長について、興味深いデータが示される。
『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』2016年3月号よりお届けする。

スタートアップ企業の
成長スピードが速まっている

 7年前、ウーバーは存在していなかった。5年前は、同社の配車サービスはサンフランシスコ限定だった。現在、それは世界65ヵ国以上に広がり、本稿執筆時の企業価値は500億ドルを上回る。その過程で同社は巨額の資金を集めて事業を拡大し、ライバルを撃退した。市場で投資家から調達した金額は80億ドルを超える。

 ウーバーをはじめとする「ユニコーン企業」(ベンチャーキャピタルから投資を受ける、企業価値10億ドル以上の非上場企業)の華々しい台頭は前例がないことのように思える。だがはたしてそうか。そして、それは重要な意味を持つのか。

 ベンチャーキャピタルが投資するスタートアップ企業を主な顧客とするシリコンバレーのコンサルティング会社、プレー・ビガーの調査によると、少なくとも時価総額で見る限り、そうしたスタートアップは近年、成長スピードを増しているという。同社はまた、IPOに先立って多額の民間資金を調達することが将来的な成功において重要な決定要因となるかどうかを調べ、スタートアップが上場する最高のタイミングを見極めようとしている。

 調査担当者たちはまず、成長スピードについて調べた。2000年以降に創業した1125社を対象に、時価総額を創業以来の年数で割り、「時価総額成長スピード」を出す。たとえば、5年前に設立された企業価値20億ドルの会社は、10年前に設立された企業価値30億ドルの会社よりもスピードが速い。上場企業の場合、時価総額とは発行済み株式の価値の合計であり、非上場企業の場合は、直近の資金調達時にベンチャーキャピタルが下した評価額である(後者の評価額は精度が落ちるが、価値創出の概算としてはおそらく最も信頼できる)。

 結果は調査担当者の予想以上に劇的だった。2012~2015年に設立された企業の成長スピードは、2000~2003年に設立された企業の2倍以上に上った。言い換えれば、現在のスタートアップ企業は10年前に設立された企業の2倍のスピードで成長しているのだ。

 ドットコム時代までは遡っていないため、現在のスタートアップがその頃(1990年代)よりも速く成長しているかどうかはわからない。プレー・ビガーの調査結果を聞いた一部のベンチャーキャピタルは、それはバブルを反映しているにすぎないとほのめかした。投資家はユニコーン企業の株式に過剰投資しており、それによって時価総額がつり上がっているというのだ。

『フィナンシャルタイムズ』紙の2015年11月の報道によると、フィデリティインベストメンツは投資先のスナップチャットの評価額──5月の前回資金調達時には150億ドルあったとされる──を25%引き下げた。また同月、モバイル決済企業のスクエアが上場申請をしたが、その価格帯は同社の企業価値──2014年の評価では60億ドル──を大きく引き下げるものだった。

 プレー・ビガーの創業パートナー、アル・ラマダンの考えでは、バブルが成長スピードに影響を与えている面はあるが、もっと基本的な要因も一役買っている。

「製品・サービスの発見や導入のスピードはかつてない水準にあります」と言う。「フェイスブック、ツイッター、タンブラー、ピンタレストなどを通じたクチコミは極めてスピードが速く、マーケティングの手法として最も効果的です」

 さらに、2007年のiPhoneの登場により、製品・サービスにとっての機会拡大だけでなく、アップルやアンドロイドのアプリケーションストアを通じてソフトウェアを迅速に配布する方法が新たにもたらされた。

「速く大きく」(Get big fast)は1990年代以来、スタートアップのスローガンになっている。多くのベンチャーキャピタルは、できるだけ多くの資本を調達するため、会社を速く成長させようとする。手持ちの現金が多ければ、潜在的ライバルを撃退するための柔軟性やパワーがもっと得られるという発想だ。しかし、プレー・ビガーの別の調査結果は、この点について警告を発している。

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