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平成14年8月29日、保安院および東京電力は自主点検作業記録に係る不正問題(29案件)を公表、その後の調査で再循環系配管点検補修の不適切な取り扱い8案件、さらに福島第一・1号機原子炉格納容器漏えい率検査に係る問題などが判明、これらを受けて県・市・村では原子炉の停止と点検を要請、その結果、全号機が停止し、点検と補修が行われました。また、その過程で圧力抑制室内への異物混入、管理区域からの物品搬出が問題となりました。
柏崎刈羽原子力発電所、福島第一・第二原子力発電所においてGE社に委託して実施した自主点検結果に関して、29件の不適切な取り扱いが行われたと保安院および東京電力が平成14年8月29日に公表しました。その後の調査で29件中、問題のある案件が16件あり、その内、柏崎刈羽原子力発電所関係では1号機で過去の自主点検においてシュラウドにひびの兆候を発見していたにもかかわらず、発電所では「異常なし」と記録し、追加調査を行わないまま放置したという1件で、保安院では「自主保安の在り方として適切とは言えない」と評価しました。なお、この他に柏崎刈羽原子力発電所ではドライヤーおよびジェットポンプで3件の問題のなかった案件がありました。
また、9月20日には、上記の29案件以外に東京電力、中部電力および東北電力の原子力発電所で再循環系配管に国に対して報告がなされていないひび割れが明らかになりました。柏崎刈羽原子力発電所では1号機で4カ所、2号機で2カ所の継ぎ手でひびが認められました。国ではシュラウドや再循環系配管で確認されたひびについて技術的に検討するため、小委員会を設置し、点検方法の適切性の確認、健全性の技術的な評価・判定方法、具体的な点検結果に基づく個別プラントの健全性の確認などについて検討・取りまとめを行いました。
その結果、シュラウドについては、応力腐食割れによるひびであり、5年後も構造強度が確保できることから現時点では補修の必要はなく、今後もひびの進展状況を把握する必要がある、補修しない場合は国の特別の許可を得て5年間に限り運転できると評価しました。東京電力では点検の結果、1、2、3、5号機でひびを確認、ひびの一部を除去した上で、ひびの原因の応力改善措置を行い、計画的な点検を行うこととしました。
再循環系配管についても、応力腐食割れによるひびであり、検査の精度に問題があることから、ひびの除去や配管の交換を行った上で運転再開すべきと評価しました。東京電力では1~5号機の全溶接線について検査が行われ、確認されたひびについては配管の取り換え、応力の改善を実施し、計画的に点検を行うこととしました。
なお、現在は再循環系配管の検査精度について一定の信頼性が確保されたことから、健全性の評価を行った上で継続使用が可能となっています。
10月25日に東京電力福島第一原子力発電所の過去の定期検査で、原子炉格納容器漏えい率検査の偽装があったことが公表されました。柏崎刈羽原子力発電所を含む東京電力の他のプラントの漏えい率検査においては不正行為の存在は認められませんでした。しかし、不正を踏まえ、全号機について同検査が厳格に実施され、判定基準を満足していることが確認されました。
平成15年10月に定期検査中の福島第一原子力発電所2号機において原子炉格納容器の圧力抑制室内で異物(足場材およびロートなど)が発見されたと公表されました。その後、停止中のプラントで圧力抑制室の点検を順次実施し、回収してきましたが、柏崎刈羽原子力発電所においても工具や器材などが発見されました。東京電力ではこれらの異物について非常用炉心冷却系への影響評価を実施したところ、安全上問題のないことを確認すると共に、原因と対策を実施しました。
平成16年1月に「柏崎刈羽原子力発電所において管理区域からの物質搬出がずさんに行われているのではないか」との報道発表があり、東京電力が調査したところ、東京電力の指導に不明確な点があったため、一部、不適切な取り扱いがありました。しかし、いずれの搬出においても厳密な測定で汚染の無いことを確認しており、汚染された放射性物質が管理区域外に持ち出されたことはありませんでした。東京電力は、今後は取り扱い基準を明確にすることとしました。
東京電力は不正事件の背景として社内の「風通しの悪さ」や「情報の停滞」などの問題があり、社内のチェック体制が機能しなかったことを踏まえ、平成14年9月に再発防止策として、「情報公開と透明性確保」、「業務の適確な遂行に向けた環境整備」、「原子力部門の社内監査の強化と企業風土の改革」および「企業倫理遵守の徹底」の4つの対策を示し、この実現に全社をあげて取り組むこととしました。平成15年3月には「品質保証システムの改善に向けた取り組み」、「企業倫理の徹底・企業風土改革に向けた取り組み」、「安全文化の醸成・定着に向けた取り組み」というそれまでの再発防止対策の実施状況をとりまとめました。さらにこれらを踏まえ、「しない風土」と「させない仕組み」の構築に取り組みました。
一方、国においては法律に基づく定期事業者検査の導入と国の検査制度の実効性の向上、設備健全性評価制度の導入、事業者の安全確保活動における品質保証体制の確立、法令違反に対する抑止力の強化、申告制度の運用改善、説明責任の確実な実行等、独立行政法人原子力安全基盤機構の設立、原子力安全委員会によるダブルチェック体制の強化などを行いました。
平成18年11月に中国電力の火力発電所での冷却用海水温度測定値の改ざんの公表を受け、東京電力は自社での同様の問題を調査しました。その中で、1、4号機において冷却用海水温度測定値の改ざんを確認、平成18年11月30日に公表しました。
これを受けて12月1日に県・市・村は東京電力にデータ改ざんの有無の調査を要請、また、保安院は11月30日に電気事業者に火力・水力も含めた発電設備に係る総点検を指示、これを受けて東京電力が総点検計画に基づいて調査した結果、確認された改ざん事象は以下のとおりです。
保安院は法律に抵触するような事案に対する保安規定の変更命令の行政処分を始め、今後の発電設備の安全・保安の向上、安全文化の構築につながる30項目の対応を求めました。
東京電力では、従来の不正問題再発防止策について「しない風土」、「させない仕組み」の追加・拡充を図ると共に、新たに不適切な事案が発生、または確認された場合につつみ隠さない「言い出す仕組み」の構築に取り組みました。
号機 |
実施時期 |
概要 |
---|---|---|
1号機 |
平成4年5月 |
残留熱除去冷却中間ポンプ(A)起動の不正表示 |
1~3号機 |
平成6年9月~平成10年10月 |
主蒸気隔離弁漏えい検査結果(停止後)における不正な弁の操作 |
3号機 |
平成6年11月 |
残留熱除去系ポンプ(B)の吐出圧力計の不適切な調整 |
7号機 |
平成13年3月 |
蒸気タービン性能検査における警報表示の改ざん |
7号機 |
平成13年3月 |
蒸気タービン性能検査における組立状況検査データの改ざん |
号機 |
実施時期 |
概要 |
---|---|---|
1号機 |
平成4年2月 |
定期検査開始のためのプラント停止操作における原子炉スクラム事象の隠蔽 |
号機不明 |
平成7年~平成9年 |
排気筒放射性ヨウ素濃度の不正な測定による社内検査記録データの改ざん |
4号機 |
平成7年5月 |
排気筒モニタコンピュータ処理の不正な上書きによる社内記録データの改ざん |
1号機 |
平成7年8月 |
運転日誌(社内記録)などの熱出力計算機打出し値の改ざん |
3号機 |
平成7年7月 |
高圧炉心スプレイ系ディーゼル発電機定例試験記録および当直引き継ぎ日誌の改ざん |
1号機 |
平成16年11月~平成19年1月 |
復水器出口海水温度データの改ざん |
4号機 |
平成14年2月~平成18年12月 |
復水器出口海水温度データの改ざん |
号機 |
実施時期 |
概要 |
---|---|---|
1号機 |
平成12年4月 |
定期検査中、作業手順を誤ったため、制御棒2本が引き抜け |
6号機 |
平成8年6月 |
試運転中に安全処理を誤ったことにより、制御棒4本が引き抜け |
3号機 |
平成17年4月 |
定期検査中、作業手順を誤ったため、制御棒が過挿入 |
※いずれも臨界には至らず
柏崎刈羽原子力発電所における冷却用海水温度測定値の改ざんを受け、平成18年12月1日、県・市・村は三者連名で東京電力に対して原因調査、点検と再発防止対策を求めました。また、東京電力の調査結果などを受け、平成19年2月2日に協定に基づく状況確認を実施、2月20日は三者会談を踏まえ、経済産業大臣に原子力発電所の安全・安心の確保を要請しました。
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