金継って何?
室町時代に始まった
室町時代に流行した「茶の湯」文化。そのとき、日ごろ使う器の修理から金継文化が生まれたと言われています。昨今では海外からのファンも多いそうですね。この日本独自の先人の知恵に魅了され、日本に移り住み金継の先生になった外国人もいるんだそうです!
漆がポイント
金継ぎのポイントは漆です。漆は、日本の工芸品や神社仏閣などで使われています。お箸やお椀の赤い塗料や艶のある黒色、見たことのあるかたも多いと思います。漆はこのような塗料だけでなく接着剤としても使うことができます。器は、漆の接着力を使って金継ぎとして再生されてきました。
最近では、「新うるし」と呼ばれているカシューナッツを主原料としたカシュー漆という製品もあります。現在、国産の漆はとても貴重で、国内で売られている漆の90%は中国産と言われています。一方で、本来の漆よりも手軽に利用できる「新うるし」は、かぶれる心配もなく手軽です。しかし、耐久性は本来の漆のほうが高いので金継ぎの用途によって選ぶのがいいかもしれません。
いろいろな金継ぎ
ひび、割れ
お気に入りの器をうっかり落としてしまった。ショックですよね。しかし、金継ぎの技術を知っていれば新しく再生することができますね。割れ目も、そのお皿のチャームポイントになりうるのです!修理に頼んでもよいし、金継ぎ体験に出向いて自分で直してみるのも楽しそうですね。また手作りキットを購入して自力でがんばる方法もあります。
本当の漆を使って金継ぎをする場合、漆を乾かし接着するための時間が1週間はかかります。時間をかけた分、愛着も深まるかもしれませんね。新漆を使う場合は、本漆と比べ強度は落ちますが、比較的に手軽に楽しむことができます。
欠け
お皿の角をぶつけてしまった!ショックですよね。しかし、こちらも金継ぎの技術を知っていればその欠けがお皿の演出ポイントにもなるかもしれないのです。金継ぎの起源となる、室町時代には「わび、さび」という文化が流行りました。これは、質素な、貧しい中にこそ美しさを見つけてみようというユニークな発想です。
欠けの金継ぎをほどこすことで、今まで以上の価値のあるものに生まれ変わらせる。なんだか夢がありますね。そんな手法を自分でもできるようになったらステキですね。
呼び
出典: annekata.com
転んでもただでは起きない。金継ぎの中でも、「呼び」は少し高度なテクニックになります。異素材の器を「欠け」にはめ込むことで、新しい風合いを呼びます。ぴたりとはめられるかどうかが、やや難しそうですが絶妙なセンスで器の雰囲気がガラリと変わりますね!
必要な道具
漆
生漆(きうるし)は割れの接着に使います。国産は大変貴重で中国産がほとんどです。金を蒔く前に塗る弁柄漆(べんがらうるし)や絵漆、黒箔下漆(くろはくじたうるし)などがあります。小麦粉や砥の粉などど混ぜ使います。本漆はかぶれるので、必ず手袋をして扱うのがよいでしょう。
かぶれない漆は新うるしと言います。本来のもととは違いますが、現代の用途にあわせて新しく生み出されたものです。
粉
砥の粉(とのこ)や地の粉は漆と混ぜて使います。砥の粉とは、岩石が風化してできた粘土質の粉です。この岩石の風化の度合によって赤、白、黄などの幾つかの色みの違いがあります。地の粉も同じように粘土や火山灰からできています。これを焼いてくだき粉にしたものです。どちらも下地に混ぜ込み使うことで強度を高めます。
金粉
金粉だけでなく、銀粉、真鍮粉などがあります。また、同じ色の金粉にもいくつか種類あります。たとえば、丸粉と消粉と呼ばれるものがあります。消粉は丸粉より粒子が細かく、くっついてから磨かなくてよい粉です。磨かない分、艶は出ずマットな感じの仕上がりになります。
一方で丸粉を使う場合は、くっついたあと磨く必要があります。この磨いているときも職人ぽくて楽しいです。丸粉は手間がかかりますが、その分強度も高く、艶もあります。研石粉は、丸粉を磨くときサラダ油と混ぜて使います。
油
「テレピン油」は 漆を薄めたり、道具や器についた漆をふき取るときに使います。油をしみこませるための布などがあると、掃除がはかどりますね。
キッチンにもあるサラダ油や小麦粉
サラダ油は、筆を洗ったり、テレピンで漆を拭き取った後に使います。また、先ほどもお伝えしたように丸粉を使った場合は磨き油としても役割があります。
小麦粉は、漆と混ぜて「麦漆」を作りそれで割れた器の接着に使います。一見、金継ぎとはほど遠いようなキッチン食材も器の修理材料として使われてきたのね。口に入れるものを乗せる器も、安心な素材で作られいることがわかると嬉しいものです。
ヤマトノリ
漆と混ぜて「錆漆」を作り、これを使って器の欠けを埋めます。ヤマトノリがなければご飯粒でも糊になります。また障子糊でもよいそうです。
ヘラ・筆・毛棒など
ヘラは漆と混ぜるときに使います。筆は、漆を塗るときに使います。毛棒は金粉を塗るときに使います。そのほかには、漆を練るパレットがあるといいでしょう。マスキングテープは、割れた器を漆でくっつけたあとは、一週間ほど室(むろ)で漆を乾かすときに器を固定するために使います。
耐水サンドペーパーやクリスタル砥石は、漆が乾いたら表面を平らに研ぐのに使います。布やテッシュは、使用後の道具の掃除に使います。漆がつかないように、新聞紙などもあるとよいでしょう。
こんなものまで道具に!?
この白い角のような形は何だかわかりますか?
これは「鯛牙」です。継いだ金を磨くための道具として使われていたそうです。こんなものまで道具にしてしまうなんてしまうなんて不思議ですね。実際には、この道具がなくてもヤスリなどで金を磨けますので参考までに。
漆の室(むろ)作り
金継ぎのポイントは、漆を上手に固めること。漆は空気中の水分を吸収しながら固まるものなんですね。漆を固めるのに適した環境は、一般的に温度20から25度、そして湿度70から75%と言われています。
そのため、漆を固めるための室(むろ)を作ります。段ボールの中に、濡れ雑巾を置き、その上にすのこを敷いて器を乾かす方法がコスパもよく便利です。季節や天気によっても左右します。温度湿度を感じながら、工夫してみてくださいね。
手作りキット
初心者セット
ヒビや割れ、欠けの補修に使える金継ぎのセットです。カンタンな説明書もついていて、作業内に疑問点があれば販売主の株式会社目白の漆アドバイザーが電話で対応もしてくれるそうです。キットの内容は次のようになっています。最初から1つづつ揃えるのは難しいので、こんなものがあると便利ですね。
セットの内容
具体的に、セットにはだいたいこのようなものが含まれているようですね。
・金継ぎ用生漆×20g
・砥の粉×50g
・プラペラ×35mm
・耐水ペーパー#600×10cm
・練弁柄漆×20g
・面相筆(小)×1
・小皿×1枚
・ガムテンピン油×100cc
・純金消粉(上色)× 0.1g
・代用金粉×10g (金粉0.1gで2mm幅を10cm〜20cmひけます。)
・真綿×1袋
・毛棒(小)×1
・ゴム手袋×1双
初心者セット使い方
株式会社 目白の動画です。初心者に分かりやすい内容です。室(むろ)の作り方や使い方についても説明があるので参考にしてみるといいかもしれません。
艶を出すor艶を消す?
手作りキットや金継教室にいってみる場合などにも気にしてみたいことの1つに、金粉での仕上げ方に違いがあります。艶を出す仕上がりにするのか、艶無しのマットな感じに仕上げたいかによって使う金粉も違います。
艶を出したい場合は、その分磨きの工程が増えるので手間をかけますが、磨くことにより艶が出るだけでなく器と漆、金粉がよく密着して丈夫な仕上がりとなります。艶消しの場合は「消粉」という粒子の細かい金粉を使います。
艶ありのほうが丈夫な仕上がりになるので金継ぎのグレードも高いです。初心者セットの場合は、磨く工程の少ない消粉を使うタイプが多いようです。こちらの箕輪漆行の金継セットも消仕上げになっています。
材料をバラで買いたい場合
初心者だから、筆や皿などはあるもので代用して、本当に必要なものだけちょこっと買いたい人にはこちらの鹿田喜造漆店もオススメです。金継ぎの工程によって必要になるものを紹介してくれているので分かりやすいです。京都のお店です。
金継教室
京都
京都市立芸術大学大学院工芸専攻・漆工修了の漆作家:市川陽子先生が教えてくれる教室があります。じっくりコースと、ちょっとお試しコースと2種類が選べます。本格的な体験は15,000円で、欠けの器と割れの器を1~2個金継ぎします。ちょこっと体験は7,500円で小さな欠けの器を2~3個金継します。
大阪
本当の金継ぎは純金や本漆を使います。本物で作るメリットは大きいものですが、デメリットとしては値段が張ることでしょうか。一方「簡易金継ぎ」がコスパよく手軽なところが魅力です。純金ではなく真鍮などを使います。これもなかなかいい風合いですよね。合成漆を使うので漆特有の手が荒れる心配もないですね。
花瓶や置物などであれば必ずしも本漆を使う必要はなく、合成カシュー漆でも問題ないでしょう。ただし、口に入れるものをのせる器で頻繁に使うものであれば、本漆のほうがよいのかもしれません。代用金も上手に使ってまずは金継ぎを知ることができたらいいですね。
本格的な金継ぎは漆を固める工程期間も入りますので、何日かかかると予定しておくものになります。簡易金継ぎは、工程も少なくなりますので手頃と言えば手頃ですね。こちらの教室では、体験で使った道具を一部持ち帰れるそうなので、やり方を先生に学び、その後はご自宅で続きを楽しんでいくこともできますね。
東京
東京の各地でも金継ぎの体験ができます。漆を楽しむことを伝えるために活動されている2人組のユニット「うるしさん」。修理からワークショップまで色々と活動されています。本漆を使用した全6回の本格的な教室もあるようです。
漫画家でもある堀道広さんの「金継部」でも体験ができます。こちらも都内各地でワークショップが行われています。開催場所もおしゃれなカフェなど、いい刺激を得られそうですよ。
各地ワークショップ
他にも各地で体験やワークショップのできる場所がありましたので、ご紹介します。
金継の値段(お願いする場合)
傷の大きさや欠けによる
たとえば、傷が1cmを金継ぎ修理に出すと3,000円程が相場です。その1cmが割れだけでなく欠けの部分の補修も含めると6,000円くらいになるそうです。また、本金継ぎと、簡易金継ぎによっても価格は変わります。さきほどご紹介した教室の先生もほとんどの方が修理も受け付けてくださいます。
金か銀か
金継ぎをほどこすときにつかう粉を、金にするか銀にするか真鍮にするかでも材料費が変わります。ちなみに、お店によっては赤などのカラーもあります。仕上がりのカラーイメージをもって相談してみるといいかもしれませんね。
自分で修理
修理を依頼するくらいの金額で、初心者キットを買って自分で修理するのもカッコいいかもしれませんね。これは裏技ですが、エポキシパテで補修して、真鍮で仕上げると金継ぎのようになります。古くから伝わる金継ぎのアイディアを受け継ぎながら、新しい方法を生み出していくのもステキですね。
オススメは体験やワークショップです。なにより日ごろから金継ぎに触れている先生方に出会えることは良い刺激になると思います。長年、金継ぎに親しまれているからこそ伝えたいことや、その魅力について直接うかがえる機会は是非チャレンジしてみたいものですね。