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研究補助金を人件費に…目的外使用か

 公益財団法人「全国里親会」(東京都港区)が、里親制度に関する調査研究事業のために国から交付された補助金のうち年間400万円以上を、事務職員1人分の人件費全額に充てていることが分かった。職員は事業の経理処理などには携わっているものの、団体の事務全般を担当している。専門家は補助金の一部目的外使用に当たる可能性を指摘する。

     同会を巡っては、2012年度以降の決算書を適正に作成していないとして、監督する内閣府が修正を求めている。内閣府は今後、公益認定法に基づく立ち入り検査を実施し、決算書作成の経緯などを詳しく調べる方針。

     調査研究事業の補助金は厚生労働省が12年度に設け、別の団体を経由して同会に交付している。交付要綱は、事業に必要な報酬や旅費、備品代などを補助対象としている。

     同会の職員は旧厚生省OBの事務局長を含め2人。同会が公開した決算書などによると、遅くとも13年度以降、うち1人分の人件費(社会保険料など含む)全額を補助金で賄っていた。各年度の補助金1391万円から13年度は約440万円、14年度は約420万円、15年度は約510万円を充てている(15年度は予算ベース)。

     一方で同会は調査研究事業のため毎年度、福祉マネジメントの修士取得者など1人を研究員として委嘱し、13年度約210万円▽14年度約260万円▽15年度約250万円(予算額)の謝金を補助金から支出している。

     事業を巡り研究員を務めた女性がパワーハラスメントを受けたとして同会などに賠償を求め提訴しているが、訴訟記録の中で同会側は、補助金で人件費が賄われている職員の仕事について「事務であり調査研究ではない」と説明している。補助金からの人件費支出について同会事務局長は「厚労省と協議して予算計上しており全く問題ない」と説明する。これに対し厚労省家庭福祉課の担当者は「内閣府の指導状況などを踏まえ対応を検討する」としている。

     元会計検査院局長の有川博・日本大教授(公共政策)は「当該事業に関係のない人件費は当然、補助の対象外。補助金の目的外使用を禁じた補助金適正化法に抵触する可能性もある」と指摘している。【武本光政】

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