(2016年2月16日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

長期金利が初のマイナス、東京債券市場

16日にマイナス金利政策を正式スタートさせた日銀〔AFPBB News

 マイナス金利政策(NIRP)は、しっかり守られている秘密に少し似ている。隠されている間はよいが、より一般に知られるようになると効き目が弱くなってしまう、という意味だ。

 この非伝統的金融政策の先駆者は欧州に見いだすことができる。

 スイス、スウェーデン、デンマークの3カ国は近年、互いにからみ合ういくつかの懸念――望まない通貨高、弱々しい経済成長、低インフレ、そして資本の流入――に対処すべくNIRPを用いてきた。

 2014年には欧州中央銀行(ECB)がこの仲間に加わり、先月には日銀も予想外のマイナス金利導入を発表し、宗旨替えを果たしている。

 中央銀行の政策手段としてのNIRPは量的緩和と同じ部類に属し、資産買い入れに資金を投じることなく金融を緩和することを目指している。

 NIRPは為替レートを管理する意図的な試みのようにも見えるが、実は、中央銀行に打つ手がないことをさらけ出しているにすぎないのではないだろうか。

マイナス金利でも通貨が上昇?

 NIRPや量的緩和は、利回りのより高い資産を探すよう投資家に促すことから通貨安を招くはずだというのが、そもそもの考えだ。

 その通りになる可能性が最も高いのは、外国に経済成長の兆しが見られたり、自国通貨が割高だったり、NIRPを導入した国が経常赤字を出していたりといった多くの要因が働いている時だ。

 だが、ECBと日銀については、NIRPを効果的なものにするこれらの条件がそろう兆しがほとんどない。ユーロ圏も日本も多額の経常黒字を計上しているうえに、新興国は小幅な経済成長しか遂げないと見られており、自国・地域の通貨は、ドル安に一役買っている、次第にハト派色を強める米連邦準備理事会(FRB)の発言に苦しめられている。