マイナス成長 奇策より地道に改革を
毎日新聞
世の中に大量のお金を流して景気回復を図ろうというアベノミクスの手詰まり感がさらにはっきりしたのではないか。
昨年10〜12月期の実質国内総生産(GDP)はマイナス成長だった。第2次安倍晋三政権が発足してから3年を経ても景気は足踏み状態だ。
日銀のマイナス金利政策がきのう始まった。だが、安定的な成長に導くには、金融緩和の強化に突き進むよりも、日本経済の足腰を強める改革に地道に取り組むべきだ。
マイナス成長の主因は消費低迷だ。政府は「暖冬による一時的な不振」と強調する。だが、エコノミストの間では「賃金伸び悩みに伴う家計の節約が響いた」との見方が多い。
日銀は大規模な金融緩和を続け、円安が進んだ。企業業績が改善し、株価も上昇した。政府は、企業が賃金や設備投資を増やして経済が活性化する「好循環」を期待した。
しかし、円安の副作用で食料品などの値上げが相次いだ。賃金の伸びは追いつかず、昨年の実質賃金は4年連続でマイナスだった。
アベノミクス旧三本の矢は金融緩和、財政出動、成長戦略だった。だが、政府は金融緩和に頼り、内需拡大につながる成長戦略の多くを先送りした。そのつけが回った形だ。
年明けから円高が進み、株価が急落した。日銀はマイナス金利という「奇策」を導入した。再び円安・株高に誘導する狙いだ。
だが、マイナス成長に見られるように緩和効果は限られる。むしろマイナス金利決定後に市場の混乱が深まる場面があった。異常な金利水準が投資家を不安にしたためだ。
市場では「1〜3月期もマイナス成長の可能性がある」との予測が出ている。参院選を控え、政府・与党内で追加の金融緩和や財政出動を促す声が強まることも予想される。
だが、マイナス金利を拡大すると市場がさらに混乱しかねない。景気対策と称してばらまきに走れば、財政赤字を積み上げるだけだ。
成熟した日本経済は潜在成長率が0%台にとどまる。むやみに高成長を目指すのではなく、息の長い成長につなげることが重要だ。
非正規社員の比率が4割に達し、賃金伸び悩みの要因となっている。非正規社員の賃金底上げを通じた格差是正に本腰を入れるべきだ。
成長戦略に掲げる女性の社会進出も取り組みが遅れている。子育て支援を充実させ、人口減を食い止める政策を明確に示さなければ、企業も国内投資を活発化させにくい。
首相はアベノミクスの柱に子育て支援などを加え、軌道修正を図ろうとしている。参院選向けのお題目に終わっては困る。