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「優しい、いいやつ」なぜ 虚勢張る面も

今井容疑者、逮捕前に介護従事者の真面目ぶりアピールも

 川崎市幸区の有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」で入所者を殺害したとして神奈川県警に逮捕された元施設職員の今井隼人容疑者(23)は逮捕前、「できるだけ幸せに過ごしてもらいたい」などと語り、介護従事者としての真面目ぶりをアピールしていた。知人の目から「優しいやつ」と映る一方、虚勢を張る面もあったという今井容疑者。入所者殺害に至る動機の究明が捜査の鍵となる。

     昨年9月8日、今井容疑者は報道陣の取材に応じた。短髪に黒縁メガネ姿。自身に疑惑の目が集まる中、動じる様子を見せなかった。

     「自分の家族が亡くなった経験から、おみとりをやりたいと思った」。老人ホームに勤めるようになったきっかけをそう話し、入所者3人の死亡について聞かれると「家族のように思ってケアをさせていただいていたのでショック。食い止められなかった後悔の気持ちと、亡くなったことの悲しみがある」と語った。

     今井容疑者は横浜市内の中学、高校を卒業後、県内の医療系専門学校に入り、2014年3月に救急救命士の国家資格を取得した。だが救命士の道には進まず、同年5月にSアミーユ川崎幸町に就職した。専門学校時代の同級生の男性(22)は「とても優しくていいやつ。命を助ける資格を持っているのに、まさか高齢者を殺害するなんて……」と驚きを隠さない。

     施設では仕事への熱意も見せていたという。運営会社の積和サポートシステムによると、今井容疑者は働きながら学校に通い、14年11月に「介護職員初任者研修」(旧ホームヘルパー2級)の資格を取得したという。同社の岩本隆博社長は「他の職員からは頼りにされていたと聞いている」と話す。

     一方で、施設で働き始めて間もなく、同僚らと高級鉄板焼き店やプロ野球観戦などに出掛けては、料金をおごるようになった。「大学病院の救命センターの仕事を掛け持ちしているから金はある」とうそをついていた。

     施設の給料だけでは足りず、金に困ると入所者の現金や貴金属を盗むようになった。窃盗罪に問われた横浜地裁川崎支部の公判では「自分をよく見せたかった。見えを張りたかった。入所者の物を盗むことへの罪悪感が少なかった」と話した。判決は「友人らと遊興するために、本来必要がない分まで代金を負担するために盗みを繰り返すというのはいささか理解し難い行動」と指摘していた。【福永方人、国本愛、松浦吉剛】

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