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 合格率1割台の狭き門、介護支援専門員(ケアマネジャー)の試験に、全盲の八木秀樹さん(65)=奈良県平群町若葉台=が合格した。音読してもらった教科書をくり返し聞き込み、集中力を研ぎ澄まして難関を突破した。障害と福祉の制度の谷間で困っている人の役に立ちたい、と意気込んでいる。

 大阪市の大手旅行会社で働いていた26歳の時、自動車事故が原因で失明した。社会復帰のためにと生駒市でお好み焼き店を開いて10年ほど営んだ。父の急死を機に、44歳で県立盲学校の専攻科に入り、3年後にはり師やきゅう師などの国家資格を取った。中国整体なども学んで平群町の自宅で治療院を開院。所定時間を超えても納得いくまで治療する姿勢が評判で、遠方から訪れる人も多かった。

 3年前、同居している母親が難病で車いす生活になったため、仕事を休んで身の回りの世話をした。介護保険サービスを利用したが、制度が複雑でたびたび戸惑ったという。

 障害者支援サービスに適用される法律は、65歳を超えると障害者総合支援法より介護保険法が優先される。障害者団体の関係者からも、「戸惑う声が多いので、ケアマネ資格を取って相談に乗ってほしい」と依頼された。はり・きゅう師などの資格で5年以上の実務経験がある八木さんには受験資格があるためだ。

 分厚い教科書を音読ボランティアに吹き込んでもらうと計24時間分になった。CDに入れ、くり返し聴いて、覚えた。試験直前の昨年9月に母が入院し、過去の出題をおさらいする余裕がないまま受験に臨んだ。通常より1時間長い3時間の試験は別室で受験。最後の1秒までかけて解ききった。自信はなかったが、12月に合格通知が届いた。