サウジアラビア、ロシア、カタール、ベネズエラの四カ国が、いま以上に生産を拡大しないということについて条件付きで合意しました。

これは色んな意味で軟弱な合意です。

まずこれら四か国は現在、すでにそれぞれの生産キャパシティめいっぱい増産しており、合意のある、ないにかかわらず、これ以上、生産を引き上げることは技術的に相当難しいです。

今回の合意は、だから実質的には、誰かが譲歩したということではないのです。

次にこの合意には「ただし、イランとイラクが現在の生産水準を超えない事」という条件が付いています。これはとりわけイランにとって著しく不利な条件です。イランは、当然、無視するでしょう。

なぜならイランは核開発を巡って各国から経済制裁を受けてきたわけで、最近、ようやくその経済制裁が解除され、欧州などへの原油の輸出が再開されたばかりだからです。つまり現在の極端に低い生産水準を大至急引き上げなくてはいけないのです。

そう考えてくると今回の発表は中身のある減産合意ではなく、実際にはイランをいじめるPRキャンペーン以外の何物でもないのです。

市場関係者はその程度のことは承知していますから、この空虚な発表が出てから31ドルにつっかけていた原油価格は28ドル台へと値を消しています。

増産余力という観点からは、目先、もっともキャパシティが余っている国は、実はアメリカです。

シェール開発の技術は、原油価格が急落した後のこんにちでも、日進月歩の速度で向上しています。一例としてパイオニア・ナチュラル・リソーセズ(ティッカーシンボル:PXD)は去年に比べて今年は油井数を半減すると発表しているけど、生産量は去年に比べて+10%を見込んでいるわけです。つまり残った油田ではキョーレツな生産性向上が起きているというわけ。

こんな調子で増産ノウハウを全米のシェールに適用されたのでは、原油価格はひとたまりもありません。

だからサウジアラビアはアメリカのシェール業者を倒産させることで二度と立ち上がれないようにすることに必死になっているわけです。OPECが減産し、原油価格が上昇すれば、せっかく息の根を止める寸前まで行っているのを、敵に塩を送る結果となります。

ウエスト・テキサス・インターメディエート(WTI)で25ドルの水準が、少なくとも4か月維持できないと、そういう大量倒産は演出できません

原油価格の低迷は、まだ続くと思います。