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インディーズ作家ヘリベマルヲを絶対に許さない - 「悪魔とドライヴ」

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悪魔とドライヴ

悪魔とドライヴ

世渡りに長けた人間の本ばかりが読まれる。

誰もが自由に出版できる電子書籍の世界。ようやく俺の居場所が見つかったと思ったのに、結局は俺の苦手な人間社会の縮図。

KDPは著名人の知名度換金システム。人から愛される人間の本は売れる。俺は誰からも愛されたことがない。これまでだってこれからだって。

人から嗤われ罵られ続けるだけの人生。せめて小説くらいはまともなものを書きたかったが、誰にも見向きされない。

俺の小説はゴミ。

俺の人生はゴミ。


一年前のあなた──インディーズ作家ヘリベマルヲさんはこんな内容のブログばかり書いていた。

あなたの作品はゴミだったんだろうか?

電子出版の世界ではすでに古参ともいえるあなたの名前は、関係者の間ではそこそこ知られていたし、独特のハードボイルドな語り口は他の誰にも真似できないものだった。現日本SF作家協会会長の藤井太洋さんをはじめ、あなたの作品を賞賛した実力のある書き手や読み手は決して少なくなかった。でも賞賛の言葉はあなたに届かないようだった。

恐ろしく自己評価の低い人だった。

他者による批判の言葉にばかり過敏だった。

対人関係に嫌気がさしたのか、ツイッターアカウントを消しGoogleプラスのコミュニティを抜け、SNSで交流する人たちを羨みながら、惨めな気持ちをブログに刻み続けていた。自分の書いた作品をゴミだと自虐しながらも、誰かに見出して貰える日をどこかで待ち望んでいた。

あたしはそんなあなたを「ダサいな」って思って挑発した。自分から合コンに参加しておきながら、女の子が声を掛けてくれるのを待ってるだけの臆病者みたいだって笑ってやった。その言葉はあなたをひどく傷つけたようだった。

でも良いものさえ作れば評価してもらえるって考えは甘いし、大事なものを見落としているとあたしは思う。それをあたしはしばしば「体験」という言葉で語った。本の周りに発生する人間のあらゆる営み。本を読むことだけじゃなくて、本について語ることも、本をきっかけにして誰かと繋がることも、すべてが体験。本を出すという行為を、その内容だけではなく、どれだけ豊かな体験を提供できるのか、でも考えて欲しかった。

あたしの考える体験は、あなたにとっては創作の不純物に見えるようだった。内容以外の理由で本が売れるのが邪道に見えるのはわかる。あなたに限らずいろんな書き手に同じことを言われたから。でもあなたにはどこか思うところがあったようで、少し後になってから、あなたは他のインディーズ作家さんたちをブログの中で取り上げるようになった。悪役ぶった乱暴だけど思いやりに溢れる口調は結構ウケていたみたいで、あたしはあなたが意外なサービス精神の持ち主であることを知ることができた。

でも執筆の方はうまくいっていないようだった。自分の作品のことになると相変わらずの惨めな独白が続いた。季節が秋になる頃にはブログの更新も止まってしまった。話しかけてもどうせ口喧嘩にしかならないから、あたしは遠くからあなたを信じて見守ることにした。

年が明けてまもなく、あなたはとうとう新しい作品を書き上げた。でもあなたはそれをただちに出版しなかった。Facebookに非公開グループを作り、交流のある作家や電子出版関係者一人ひとりに礼儀正しく声を掛けて招いた。あたしから見てもかなりの実力のある人たちが集まったと思う。ソーシャルが大嫌いで人間関係で傷ついてばかりだったはずのあなたが、より良い作品をより多くの人に届けるためにソーシャルを活用し始めた。

「悪魔とドライヴ製作委員会」と名付けられた非公開グループには、あなたが書き上げたばかりの作品がアップロードされていて、そこであなたは招いた人たちに助言をお願いしたけれど、決して無理強いはしなかった。最終的に30人となったそのグループの中では、プロット、キャラクター、校閲・校正、表紙デザイン、宣伝文句、いろんな観点からの意見が出された。あなたはその全てに対して誠実に耳を傾け、直ちに作品を改良してみせた。リアルタイムで作品が変化してゆく様子は、まるで音楽のライブ演奏を見ているようだった。大変な作業だったかもしれないけれど、あなたは心の底から楽しそうだった。グループに参加した人たちも楽しそうだった。こうして本当の意味で完成した作品は、たくさんの人の意見を取り入れたにも関わらず、紛れも無くあなたの顔をしていたと思う。

あなたは自分の作品の周囲に、とても豊かな体験を作り出した。このグループに参加した人たちの心の中で、この作品は忘れられない体験として生き続けることになるはず。執筆にとどまらず本の出版にまつわるあらゆる行為を楽しんでみせたあなたの姿自体が一つのメッセージとなって、参加した人たちに届いたからこそ、あなたの手法を真似したいと思う人も少なからず生まれた。

こうして一つの作品をめぐる体験は広がってゆく。このグループの活動を知らない人たちにも、あなたのメッセージが届けばいいな、とあたしは思う。

最後に、あなたがもしこの作品をゴミを呼ぶことがあったら、あたしはあなたを絶対に許さない。

けれどもそれが杞憂に過ぎないことも、あたしは知っている。


そしてこの記事を読んでくれたあなたに朗報。

こうして生まれた作品は『悪魔とドライヴ』は2/16-2/17の間に限り、無料キャンペーンを開催中

主要なインディーズ作家たちを数多く巻き込んだこの作品は、今、このタイミングで体験することにこそ意味があるはず。

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悪魔とドライヴ

悪魔とドライヴ

ステマ? あたしは腐れ縁の友だちを応援したいだけだよ。