現在、がんの治療をおこないながら、働いている人は32万5000人にのぼると言われている(国立がん研究センター)
二人に一人が癌になると言われている時代。自分はがんにならないと根拠のない自信を掲げて、一時は安心してみても、心の何処かで「もし、がんになったら」という想像をしている人も多いのではないだろうか。
この記事では、今後の国の課題にもなっている「がんと就労」について、今一度、大切なことをお伝えする。
がんの診断をうけた際、気に留めておきたいこと
がんの告知を受けた人は一瞬、頭が真っ白になってしまうという。
その理由のひとつとして、「まさか自分は癌にはならないだろう」という思い込みがあげられる。
これはサッカーのPKで例えるなら、ゴールキーパーが「この方向にボールを蹴ってくる」という思い込みの逆をつかれてしまって、固まってしまったまま、ボールがゴールへと入ってしまうようなもの。
予想と逆をつかれてしまったという心理的な要因である。
だからこそ、まずは冷静さを取り戻すことが先決となる。
自分では落ち着いていると思っていても、そうでないことも多い。心理的にどこか焦りを感じている状態のまま、物事を決めてしまうとおそらくはロクなことにならない。
ということで、まずはがんの診断を受けたら確認したいこと3つを記載する。
- 仕事を辞めてはいけない
- 会社の制度を確認する
- 公的なサポートを活用する
仕事を辞めてしまわない
まず、癌と告知されたら、最初にしてしまいがちなこととしてあげられるのが、辞職である。
これは、会社側から退職を迫られるというよりかは、癌と告知された側の人が、自分が残ると会社側に迷惑になってしまうと、自ら辞めてしまうケースである。
他、がんを治したいと思うあまりに、治療に専念したいと思い、辞めてしまうケースもある。とにかく、落ち着けるまでは、重要な決断は先送りにする方が懸命である。
就業規則を読む
大企業・中小企業問わず、会社側にも闘病などの緊急時に対応するサポート制度がある場合が多い。
それが、傷病休暇・時短勤務・有給休暇などの「保証休暇制度」である。
まずは、会社の就業規則を読んでおこう。
ここでは、国立がん研究センターで紹介されていた保証休暇制度を実際に利用したある患者さんの例をご紹介する。
患者さんの例
手術・入院(1週目)、自宅療養(2・3週目) ⇨ 傷病休暇を使用
職場復帰(4・5週目) ⇨ 時短勤務を使用※時短勤務は、一日単位ではなく、時間単位でとれる会社もある
抗がん剤治療(1週間) ⇨ 有給休暇を使用
公的な支援を利用する
癌と就労の問題は、国でも重要な課題のひとつとなっていて、平成24年度に発表された「がん対策推進基本計画」の中に、働く世代のがん対策の強化が盛り込まれている。
これにより、全国のがん診療連携拠点病院などには、がん相談支援センターが設置されている。
がん相談支援センターでは、社労士・看護師・ソーシャルワーカー・社会福祉士などが在駐し、癌サバイバーの相談に応じている。
また、ハローワークと連携し、仕事を紹介している所もある。
これは、誰でも無料で利用することができるようになっている。
うまくいっていない課題のひとつ
がんと就労の問題において、うまくいっていないことのひとつが、がん患者・医療側からの、会社側への治療や状態に関する情報伝達である。
普段から医療情報に触れていなかった人たちにとって、病院で伝えられた治療情報をうまく会社側へと伝えるということは、少しハードルとなっているようだ。
できるだけ簡潔に伝えることができるように、自分の治療情報を会社側へ伝えるためのひな形を作成してしまおう。それを使用して情報を伝えるようにすれば、少し伝えやすくなると思われる。
現在では、中小企業含め、協力的な経営者が増えてきているというし、恐れずに伝えていこう。
ちなみに、松下産業では、在宅勤務制度を導入したり、がん治療中の方もつながっているという意識を社内でもってもらおうと、「がんになった従業員の日記などを社内報で公表する」などの取り組みをおこなっている。
そうした取り組みをおこなっている会社の経営者ほど、「サポートをおこなうのは当たり前だ」という意識をもっている。そこには、社員は大切であるとの経営者の本音が感じられる。
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