塩原賢 塩原賢
2016年2月16日00時59分
スマホやタブレットで電子書籍を読むスピードを上げる研究が進んでいる。紙の書籍の速読術は目の動きを訓練するのが基本だが、電子書籍では機械がアシストする。人が言葉を認識する仕組みと、電子書籍ならではの柔軟な文字配列などを組み合わせることで、1・3倍の速さで読むことができるようになるという。
印刷大手「大日本印刷」(東京都)が、公立はこだて未来大学(北海道)と共同で2012年半ばから、大学生を被験者に研究してきた。
同社によると、人が文章を読む時は一般的に、文字を一つずつ確認しているわけではない。例えば〈こんちには みさなん おんげき ですか?〉という文章。1文字ずつ見ていくと意味不明な言葉の羅列だが、〈こんにちは、皆さんお元気ですか?〉と認識する人が多い。目に見える文字のかたまりを、脳が勝手に意味を持ったかたまりとして変換してしまうからだ。
読書の速い・遅いは何に左右されるのだろうか。同社で研究開発に当たる小林潤平さんは「意味のかたまり(=文節)の単位を素早く見つけ、すいすいと目を動かす能力が高い人が速い。逆に、1文字ごと、単語ごとに文字を追っていると遅くなる」という。
ただ、各行の終わりは、文節とは関係なく改行されるので、読むのが速い人でも各行の終わりに近づくと、次の行にまたがった文節のかたまりを把握しようとするので読書スピードが落ちる。また、縦書きよりも横書きの方が目の動きがスムーズになり速く読めることも、予備実験を通じて分かってきた。
そこで同社は、縦書きの文庫本サイズの文章を横書きに変換し、各行末を文節の区切れで改行する言語処理システムを開発。処理後の文章を被験者に読ませたところ、もとの縦書きの文章を読むのに比べ、1分あたりに読める文字数は、平均708文字から942文字へ33%アップした。
残り:975文字/全文:1740文字
おすすめコンテンツ