昨年10~12月期の実質経済成長率は1・4%のマイナス(前期比年率換算)だった。

 国内総生産(GDP)の6割近くを占める個人消費が前期比0・8%減と落ち込んだ。暖冬で冬物衣料などの売れ行きが悪かったというが、所得の伸び悩みも背景にあろう。「外需」はGDPを押し上げたが、輸出入とも減ったなかで輸入の減少がより大きかったためだ。

 そこに、最近の為替相場や株式市場の激動である。乱高下しつつも円高と株安の基調が続いており、国内経済への悪影響を心配する声が高まってきた。

 今後の状況を注視すべき局面だ。ただ、金融の目詰まりから消費や投資が一気に落ち込んだ08年のリーマン・ショック時とは様相が異なる。日本企業の収益は過去最高水準で、雇用は人手不足もあって堅調だ。

 ここは浮足立たず、基本に沿って政策を展開するべきだ。

 まずは金融・資本市場の動揺を抑える国際協調である。

 中国で高成長の維持が難しくなり、産油国は原油相場の下落に直撃されている。金融緩和を競ってきた日米欧の中で米国が利上げに転じたこともきっかけに、あふれるマネーはリスク回避の思惑から安全資産とされる「円」へ、株式よりも国債へと流れ込む局面が目立つ。

 今月下旬には中国・上海で20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議がある。どんな手を打てるか、幅広く議論してほしい。

 日本では、アベノミクスの旧「3本の矢」のうち財政運営が注目され始めた。金融緩和に限界と弊害が指摘され、成長戦略は効果が出るまでに時間がかかるからだ。具体的には、17年4月の10%への消費増税の延期や、国会で審議中の来年度予算案の成立後をにらんだ財政出動を求める声が出ている。

 が、ここでも基本に立ち返ることが必要だ。消費増税は膨らみ続ける社会保障費をまかなうためであり、予算に関してはまずは成立済みの今年度補正予算の執行を急ぐことだろう。

 民間にも注文がある。

 これから労使による春闘が本格化し、企業は投資など来年度の計画を詰める時期を迎える。

 企業はおカネをため込んでいる。それを賃上げに回せば自社の人材力の強化につながり、業績を左右する国内市場の支えにもなろう。設備や研究開発への投資は競争力を高め、新たな収益源を生むために不可欠だ。

 足元の混乱に右往左往せず、将来に向けて戦略を練る。これが企業経営の基本のはずだ。