星賀亨弘
2016年2月15日20時07分
放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会は15日、食品工場の社内いじめやストーカー行為を取り上げたフジテレビのバラエティー番組「ニュースな晩餐(ばんさん)会」について、いじめの「首謀者」とされた女性の名誉を毀損(きそん)する人権侵害があったとして、人権と放送倫理にいっそうの配慮を求める勧告を出した。
番組は昨年3月8日に放送。いじめを受けたという女性の証言や再現映像、隠し録音、ストーカー行為をしたとされる男性の隠し撮り映像などで構成し、「首謀者」とされた女性が「事実無根」と人権委に審理を申し立てていた。
フジテレビは、関係者の映像や声を本人と分からないよう処理したことなどから、番組は特定の人物や事件を報道するものではなかったと反論。しかし、人権委は、「首謀者」が誰かは同僚には分かったとした上で、「一方当事者への取材のみに依拠して職場内での事件の背景や実態を正確に把握する努力を怠り、真実とは認めがたい事実を放送した」などと指摘した。
同じ番組について、ストーカー行為をしたとされた男性も審理を申し立てていたが、人権委は「基本的事実関係については真実」として人権侵害は認定しなかった。ただ、局側に、真実に迫る努力やプライバシーへの配慮が不足していたなどとして、「放送倫理上の問題がある」との見解を示した。
フジテレビは「勧告ならびに見解を真摯(しんし)に受け止め、今後視聴者の皆さまに信頼される番組制作および放送に努めて参ります」とのコメントを出した。(星賀亨弘)
おすすめコンテンツ