87歳転落死、元職員を殺人容疑で逮捕
川崎市幸区の有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」(積和サポートシステム運営)で入所者3人が転落死した事件で、神奈川県警は15日、うち丑沢民雄さん(当時87歳)が2014年11月に死亡した事件について、元施設職員の今井隼人容疑者(23)=横浜市神奈川区立町=を殺人容疑で逮捕した。県警は連続殺人事件の可能性があるとみて、全容解明を目指す。【村上尊一、福永方人、国本愛】
容疑認める
転落死はいずれも14年に発生。11月4日午前1時40分ごろ、要介護3の丑沢さんが4階から転落▽12月9日午前4時10分ごろ、要介護2の女性(同86歳)が4階から転落▽同31日午前1時55分ごろ、要介護3の女性(同96歳)が6階から転落−−の3件。それぞれ未明の時間帯に、敷地の裏庭の同じ場所に倒れているのを勤務中の施設職員が発見した。
逮捕容疑は14年11月3日午後11時ごろから翌4日午前1時50分ごろまでの間、施設4階ベランダから丑沢さんを投げ落とし、内臓破裂により殺害したとしている。容疑を認めているという。
捜査関係者によると、3人の遺体には転落の際のものとみられる外傷以外に目立った外傷はなく、転落の様子を撮影した防犯カメラ映像や目撃証言もなかった。県警は事故と事件の両面から捜査した。1件目と3件目の第1発見者で、2件目の転落発生時も施設内で当直勤務をしていた今井容疑者が浮上した。
今井容疑者は3件の転落死が明らかになった昨年9月、毎日新聞などの取材に応じ「自分の(当直勤務の)時に転落が3回続いてしまい、疑われるとの気持ちはあった。今は転落を食い止められなかった後悔と、入所者が亡くなった悲しみを感じる」と話した。さらに「直接的に何かをやったということは誓ってない」と殺害を否定していた。一方、施設側も同10月の入所者向け説明会で故意による転落を全面的に否定した。
今井容疑者は昨年5月、入所者の所持金を盗んだとして窃盗容疑で逮捕され、懲戒解雇された。裁判で19件の窃盗を繰り返したことも明らかになり、同9月、懲役2年6月、執行猶予4年の判決を言い渡された。
Sアミーユ川崎幸町を巡っては入所者への暴力や暴言などの虐待行為も発覚した。昨年12月、県警が別の元職員3人を暴行容疑などで書類送検し、川崎市は施設からの介護報酬の請求を今年2月から3カ月間停止させる行政処分を出した。