しかし、現実にはさまざまな壁が立ちはだかる。その一つが、潜在成長率が急速に低下していることだ。このままいけば、30年になる前に1人当たり実質国民所得の増加率は2%を切ってしまうだろう。かつての先進国に比べはるかに速いスピードで高齢化が進んでいることも、潜在成長率を一段と押し下げる要因となる。世界経済はしばらく低成長の沼から抜け出せない可能性が高く、これは輸出への依存度が高い韓国経済の成長を一段と弱めることにつながる。内需の比重が小さく、内需に頼った成長も難しい。
こうした不利な条件を根本的に改善できなければ、韓国の1人当たり実質国民所得は3万ドル(約360万円)水準で停滞する公算が高い。実際に、スペインはこの10年間、所得水準が2万5000ドルから3万ドルの間で足踏みしている。
韓国がスペインのようにならず、G7レベルに向かうには、今後5年ほどが非常に重要になるだろう。だが、この5年間に責任を負うべき政治家たちは、潜在成長率の下落よりも所得の分配、経済民主化、不正腐敗の根絶といった社会問題により大きな関心を見せている。本当の意味での先進国を目指すつもりがあるなら、政治家にはもっと長期的な視野を持ち、大きな「絵」を描いてほしい。