「今回の問題は簡単には収まらないだろう。米国人はうそを本当に嫌うからだ」
昨年9月にフォルクスワーゲンによるディーゼル車の排ガスデータ捏造(ねつぞう)が発覚した直後、米国の大学を卒業したある知人がこのように述べた。当時、一部では「車自体の安全と直接関係するような欠陥ではない」という見方もあり、影響がどこまで広がるか注目を集めていた。この問題は要するに、試験を行うときにだけ排ガスを低減する装置が作動し、通常の使用では作動しないという点にあった。このような車をフォルクスワーゲンは各国政府やユーザーに対し「排ガスが少なく環境に優しい車」などとうその宣伝をしながら販売していたのだ。
米国市民の対応は断固たるものだった。問題が発覚する前の昨年8月、米国の自動車市場でフォルクスワーゲンのディーゼル車販売実績は8688台と先頭グループにあった。ところが問題が発覚した9月には4205台と半分以下になり、その後も10月には1879台、11月には201台、12月には76台とついに100台をも下回った。
影響はこれにとどまらなかった。米法務省はフォルクスワーゲンを相手取り、900億ドル(約11兆円)の支払いを求める民事訴訟を起こした。またフォルクスワーゲンは米国で詐欺の容疑で調査まで受けなければならなくなった。このような事態を受けてフォルクスワーゲンのミュラー会長は米国で直接、また複数回にわたって謝罪した。顧客1人当たり1000ドル(約12万円)の補償に加え、問題の車は全て買い取ることにした。さらにテネシー州には9億ドル(約1100億円)を投じ、新たな工場を建設することも約束した。