■新制度は結婚、出産、子育て費用もOKに!
祖父母の資産を孫に渡しやすくする贈与税の特例が、2015年4月から延長、拡大された。
教育資金の一括贈与の非課税措置は、2013年4月に始まった制度で、祖父母が30歳未満の孫に教育資金を贈与する場合、孫1人につき1500万円まで贈与税が非課税になるというもの。
そもそも祖父母が孫の学校の入学金などを、その都度、負担する分には贈与税は発生しない。ただし、必要以上のお金を渡すと、これまでは課税対象になっていたため、この特例によって一度にまとまった金額を贈与できるようにしたのだ。
特例の利用には、孫名義の専用口座を作って一括贈与したあと、教育費目的で使ったと証明できる領収書などで、対象経費として認められれば払い出しできる。孫が30歳時点で専用口座に残っているお金には贈与税がかかる。
特例が使えるのは、当初、15年12月末までの予定だったが、高齢者から現役世代への資産移転を増やすために19年3月末まで延長することが決定。使い道も、従来の学校の教育費、塾や習い事の月謝のほかに、通学の定期券代、留学の渡航費など付随する費用まで範囲が広がった。
さらに、15年4月からは教育資金とは別枠で、子どもや孫の結婚・出産・子育て費用を一括贈与できる非課税制度もスタートした。
内容は20歳以上50歳未満の子どもや孫1人につき、1000万円まで一括贈与できる(このうち、結婚に関する費用は最大300万円)というもの。こちらも教育資金と同様に、金融機関に専用口座を作って使途を管理してもらう。
ただし、結婚や出産に関するものなら、何でも認められるわけではない。結婚式や披露宴の費用、出産費用や不妊治療にかかる費用、ベビーシッター代などは認められるが、結婚相談所の入会金やお見合いの食事代は認められない。また、ベビーベッドや紙おむつなども認められないので注意を。子どもや孫が50歳時点で口座にお金が残っている場合は贈与税が課され、また途中で祖父母や親が死亡した場合は相続財産とみなされる。
一括贈与の特例は、年間110万円までの暦年贈与とは別枠で利用可能。祖父母が元気なうちに、まとまったお金を贈与できるので、この優遇税制を歓迎する声は多い。ただし、孫や子どもにお金を渡しすぎると、祖父母や親の生活がなりたたなくなることもある。その後の生活設計を考えたうえで贈与額を決めたいもの。
また、一括贈与の専用口座は、銀行や信託銀行、証券会社で扱っているが、最低預入金額、口座管理料の有無、事前引き出しの条件などは、金融機関によって異なる。複数を比較して、使い勝手のよい口座を選ぶことも大切だ。
ほかにも、育児休業中だけだった社会保険(厚生年金、健康保険)料の免除が、15年4月から産休期間にも広がった。また、児童手当の給付対象世帯には、15年4月から「子育て世帯臨時特例給付金」が児童一人につき3000円給付されている。漏れなくチェックして家計防衛に役立ててほしい。
※図版は井戸美枝氏への取材をもとに編集部で作成
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非課税控除のプロフェッショナル●井戸美枝
経済エッセイスト。ファイナンシャル・プランナー。社会保険労務士。著書に『知らないと損をする 国からもらえるお金の本』『図解 2015年度介護保険の改正 早わかりガイド』『現役女子のおカネ計画』ほか多数。
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早川幸子=構成
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