小惑星探査機「はやぶさ」に採用された最適電力制御(ピークカット)技術を鉄道分野に応用する取り組みが、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、鉄道総合技術研究所、東京急行電鉄グループの東急テクノシステム(川崎市宮前区)で始まった。消費電力量を減らせるだけでなく、首都圏では常態化している通勤ラッシュによる列車の遅延を抑えられる可能性があるという。宇宙開発で培った技術の民間転用という視点でも注目されている。
はやぶさは太陽電池で発電した電気でエンジンやヒーター、制御機器などを動かす。日照があるときしか発電できないため限られた電力を効率よく融通しあう必要があった。このため、はやぶさでは個々の機器が電力の使用状況を発信。その情報をもとに、それぞれの機器が独立して並列にピーク電力を下げていく技術が取り入れられた。
一方、鉄道では朝夕を中心に駅で停車中の乗降に時間がかかることなどから、列車が数珠つなぎになり、ダイヤが乱れることがある。遅れを取り戻すために加速すると電力使用量は増える。しかも朝夕の時間帯には多数の列車を運行している。
このため、停止中の列車を一斉に出発させると、変電所の容量を超えてしまう可能性がある。容量が超えてしまえば、列車の運行が困難になる。小さなアンペア数の家庭で、消費電力の大きな家電機器を複数で同時に使うとブレーカーが落ちるのと同じだ。
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