世界で最も高く評価されている企業として急成長を続けてきた米アップルの勢いに陰りが出ている。1月26日に発表した2015年10〜12月期決算は8四半期連続の増益を確保したものの、売上高の伸び率は10四半期ぶりの低水準。稼ぎ頭のスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」の販売台数は07年の販売開始以来、最低の伸び率となっている。背景にあるのは中国市場の減速や競合の激化や昨年9月に発売したアイフォーン6sシリーズが急成長を維持するだけの評価を得られなかったこと。アップルは中国市場への強気を捨てていないが、業績が転機を迎える可能性もある。
「今月に入って中国圏で軟調の兆しが出てきている」。アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO、55)は1月26日の電話会見で、勢いを失った業績の背景に中国経済の減速があることを認めた。
クック氏は昨年10月の7〜9月期の決算発表では「中国圏のすべてのアップルストアを回ったが、世界中で最も忙しい状態だ」と説明。昨夏以降に表面化した中国経済減速の影響がアップルに悪影響を及ぼすとの見方を打ち消していた。しかし10〜12月期の中国圏の売上高は前年同期比14%増で、4四半期連続で記録した70〜112%の大幅成長から大きく減速。クック氏もアップルが抱える「中国リスク」を実感せざるを得ない状況になっている。
他の市場に比べて桁違いの伸び率をたたき出してきた中国市場はアップルの成長の原動力だった。
しかし市場関係者からは「中国市場はもはや他の市場の伸び悩みをカバーするだけの勢いがなくなっている」との声も目立つ。アップルは16年1〜3月期の総売上高は500億〜530億ドル(約6兆〜6兆4200億円)になるとしており、13年ぶりの減収に転落する見通しだ。
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