大阪市を廃止分割するいわゆる「大阪都構想」のマイナス面とリスクについては、橋下大阪市長も大阪維新の会もほとんど言及しない。医者が治療法のリスクを患者に説明するように、「大阪市解体」のリスクを住民に説明すべきだ、そう考える学者による説明会が5日大阪市内で開かれた。その報告の四回目。教育と環境の専門家が大阪市解体の問題点を指摘した。(新聞うずみ火 栗原佳子)
教育学者の立場から警鐘を鳴らしたのは大阪大学教授の小野田正利さん。今年度の教員採用試験倍率は京都市が4.4倍、神戸市が4.6倍。大阪市は2.0倍と極端に低い。小野田さんは3年前に大阪維新の会が中心となって成立させた府市の教育基本条例の影響を指摘、「大阪の教育は危機的状況に直面している」と嘆いた。
加えて、大阪市解体5分割が現実になれば
「政令指定都市として有していた優秀な教員確保のための採用や研修の権限は喪失、同時に学校設置運営にかかわる学校の条件整備はより劣化し貧弱になっていくことは明確」とし、しかも、障害児教育へのしわ寄せも懸念されるという。
かつて「煙の都」とも称された大阪市は、大気汚染対策などでも先進的に取り組んできた経緯がある。兵庫県立大名誉教授の河野仁さんは(大気環境学・気象学)は
「大都市としてまとまりのある環境行政を進めるためには、政令指定都市である大阪市という行政単位が必要。大阪市の環境分野の専門技術者はトップレベルだが、市解体は専門家集団の解体でもあり、再び育成するには数十年の年月を要するだろう」
と警告した。
同じく大気環境学が専門の大阪大学大学院元助手、喜多善史さんも
「大阪市民の健康を守るため大阪市域26カ所で大気汚染状況の常時監視測定が継続されている。専門職員の確保と市全域を管轄する環境局を存続強化することが不可欠だ」
と市解体5分割が大気環境保全施策と逆行すると憂えた。(続く)
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