米国の次の大統領を選ぶ選挙戦で、共和党のドナルド・トランプ氏の旋風が続いている。当初、記者はこのトランプ旋風を一時的な現象と考え、周囲にも自信を持ってそのように語っていた。4年前に米国特派員として大統領選挙を取材した時も、この種の一時的な現象は幾つも目にしたからだ。お笑い芸人のように観客を喜ばせるショーマンシップにたけたこの不動産財閥は、他の候補者とは次元の異なる刺激的な発言で注目を集め、並み居る共和党大統領候補の中で支持率トップに上り詰めた。ところが政界やメディアは「トランプ旋風は米国の恥」などと激しく批判し、登場からわずか数カ月後には彼の人気にも陰りが出始めたかのように見えた。
実際最近も「全ての中国製品に25%の関税をかけなければならない」「韓国はわれわれの雇用を奪っているのに、なぜただで空母を派遣しているのか」など、4年前に語った根拠のない主張を今なお繰り返していることから、トランプ氏の勢いが近く消滅するのは間違いないと思っていた。
ところが選挙戦が本格化した今もなお、トランプ氏は共和党内で支持率1位を維持している。この勢いは記者にとっても想定外だ。今や選挙の結果に関係なく、このトランプ旋風は単に一時的なものと軽く考えるべきではないのかもしれない。トランプ氏の一連の発言は、米国人の意識の変化を反映したものであり、もしかするとわれわれもこの変化を受け入れざるを得ないのではないか。
先日韓国を訪問した米国のあるシンクタンクの関係者はトランプ旋風の背景について「米国のものを奪う外国への批判」と「この批判で国民を扇動する発言」が庶民の共感を得ていることにあるとの見方を示した。度重なる経済危機の影響で、米国人たちは国際社会で「大義名分」や「義務感」により自分たちの税金が使われることに不満を抱いており、今やそのことへの忍耐力も低下している。このような米国人の不満をトランプ氏はうまく刺激し、利用したというのだ。