20年以上にわたり予備校を運営していた校長の話を聞いて、感動したことがある。「大学入試の成績は、中学2年時点での成績がほぼそのまま直結するようだ」。この校長の分析がどこまで事実に近いかは分からないが、興味深いのは次の言葉だった。「ごく例外的に成績が大幅にアップする生徒がいる。そのような生徒の共通点を探ってみると、中2から高3の間に家庭内で大きな変化があったという生徒が多かった。良い方向への変化ではない。両親のどちらかが亡くなったとか、失業したとか、事業に失敗したなどの変化だ。つまり、家庭が壊滅的な打撃を受けるほど家庭環境が悪化した生徒たちに、そのような例外ケースが多く見られた」
劣悪な環境と危機は、人間を挫折させ、目標を諦めさせる要因となり得る。反対にそのような危機を打開する創造力と潜在力が爆発的に開花することもある。韓国の経済や企業の成長にも、そのようなケースは多く見られる。
韓国政府はかつて、5か国の鉄鋼会社8社で構成された「対韓国際製鉄借款団(KISA)」から1億ドルを借款し、浦項総合製鉄(現ポスコ)を建設する計画だった。しかしこの計画は実現しなかった。国際復興開発銀行(IBRD、世界銀行)の「1968年韓国経済動向報告書」が韓国の総合製鉄所建設について否定的な評価を下したからだ。韓国の経済規模と産業水準では総合製鉄所を軌道に乗せることはできないということだった。KISAはこの報告書を理由に、借款の提供を拒否した。
結果はどうだったか。ポスコはKISAの借款無しで誕生し、最近は6年連続で「世界一競争力のある鉄鋼会社」に選ばれている。当時、IBRDの報告書は英国人のJ.ジャッフェ博士によって作成された。伝記作家のイ・デファン氏が著した『世界最高の鉄鋼人・朴泰俊(パク・テジュン)』には、(ポスコの創業者である)故・朴泰俊氏が1986年に英国でジャッフェ氏と会ったときの話が出てくる。朴氏が当時の報告書について尋ねると、ジャッフェ氏はこう答えた。「私は総合製鉄所を建設・運用する上で考慮すべき内需規模、技術水準、原材料の供給可能性、市場性を公正に分析した。もう一度報告書を書くとしても、同じような書き方をするだろう。しかし当時見逃していたことがある。それはあなただ。あなたが常識を超える形でプロジェクトを率い、成功させたのだ」