井口恵理
2016年2月15日03時59分
長野県軽井沢町でスキーツアーの大型バスが道路脇に転落し、乗客・乗員15人が死亡した事故から15日で1カ月になる。
「被害者支援に正解はない」。遺族支援を担当してきた長野県警犯罪被害者支援室の警部補、内田麻衣さん(35)は今、改めて実感している。
自分を責める人、ショックで何も話せない人。遺族の中にも気持ちに違いがあり、毎回悩みながら向き合ってきた。「悪いのはあなたじゃない。自分を責めないで、一人で悩まずに相談してほしい」
事故発生の1月15日。内田さんは、軽井沢町中央公民館に駆けつけて遺体と対面する遺族に付き添い、霊柩(れいきゅう)車の手配を手伝った。17日からは、現場で見つかった旅行カバンや洋服などの遺品を遺族に届けた。
遺族宅を訪れる時、白やピンクのサクラソウの鉢植えを一緒に手渡した。軽井沢町の町花。「亡くなった方を少しでも近くに感じてほしい」との思いを込めたという。現在も週1回ほど遺族に連絡を取り、捜査状況などを伝えている。
2014年9月の御嶽山噴火災害で遺族らの支援を経験。昨夏には「サイコロジカル・ファーストエイド(PFA)」と呼ばれる心の応急処置の研修も受けた。
内田さんは「事故から1カ月と言っても、遺族や負傷者の心の傷は深い。どうすれば元の生活を取り戻せるかを考え続けています」と話す。
事故で亡くなった首都大学東京2年の田原寛さん(当時19)の父義則さん(50)は「事故当日は放心状態で余裕がなかったが、長野県警には手厚くケアをしてもらった。すごく感謝している」と語る。
義則さんが発起人となった遺族会が今月7日に結成された。東京都内で同日開いた会合には、複数の遺族が集まった。「家族で一緒に過ごした家に戻りたくない」「毎日夢に出てきて、朝起きると涙が止まらない」――。涙を流しながら思いを語り合った。「事故以降、外に出るのはこれで3回目」と話す遺族もいたという。
残り:281文字/全文:1088文字
おすすめコンテンツ
※Twitterのサービスが混み合っている時など、ツイートが表示されない場合もあります。
朝日新聞社会部
PR比べてお得!