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木村岳史の極言暴論! 日経コンピュータ

大炎上から逃げないことだけが自慢、「尊敬」されないITベンダーの悲哀

2016/02/15
木村 岳史=日経コンピュータ (筆者執筆記事一覧

 大手SIerの幹部の中には、「うちは絶対に逃げない、とお客さんから信頼されている」と自慢げに話す人をたまに見かける。そんな話を聞くと、私は失礼ながら「他にとりえは無いのか」と思ってしまう。要件ブレブレの客の理不尽にケツをまくらず、部下や下請けの技術者にデスマーチを歩かせ、塗炭の苦しみを味わわせた挙句、客から信頼されてもねぇ…。

 そもそも本当に信頼されているのか。もちろん相手がまともな客で、技術的ハードルの高いプロジェクトで苦労を共にし、やり遂げたならば、その信頼は本物だ。だが大概の場合、そうではない。客のIT部門がまともな要件定義ができず、利用部門の勝手な要求を仕切ることができず、プロジェクトが大炎上する。その際、IT部門がどんなに理不尽でも逃げない。その「信頼」の中身は明らかだ。

 例えで言うと分かりやすい。上司のゴマをするばかりで、まともなマネジメントができない管理職が部下にムチャなノルマを課して、「君たちの頑張りを信頼しているから」と言うようなものだ。この手の管理職は、部下がノルマ未達だと「信頼を裏切られた」と怒鳴り散らす。そんな「信頼」は本当の信頼ではない。力関係を利用して要求する「絶対にやれよ」「何故できない」の言い換えにすぎない。

 「いくらなんでもIT部門を悪く言いすぎ。どんな場合でも大変な時に逃げないことを単に評価しているだけかもしれないし」と思う読者もいると思う。確かにそんなケースもあるだろう。だが、もしそうなら、さらに始末が悪い。客の“火の不始末”による大炎上で、消火のためのカネも出せない、納期の延期も難しいというのなら、当然逃げるべきである。むしろ訴訟沙汰にしたほうがよいのかもしれない。

 だがSIerは、そんな大炎上プロジェクトでも何とか対応しようとする。特に官公庁のプロジェクトでは客の責任なのに、まるで自分たちの責任のように言われても、ひたすら耐える。そして何とか完遂し、客から「おたくを信頼してよかったよ」と感謝され、たわいなく喜ぶ。プロジェクトの失敗で損失を計上し、多くの技術者がデスマの途上で倒れたのにバカである。

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