テニス界の八百長疑惑が浮上し、国際テニス連盟(ITF)などはきのう、不正防止機関の構造改革などを目的に第三者委員会を設置したと発表した。遅きに失したのではないか。
八百長疑惑の発端は、英BBC放送などの報道だった。ウィンブルドン選手権を含むトップクラスのテニスの試合で八百長行為が行われた疑いがあると十七日に報じた。同社は男子ツアーを統括する男子プロテニス協会(ATP)が二〇〇七年に実施した八百長に関する調査文書などを入手し、世界ランキング五十位以内に入ったことのある十六選手が過去十年間に意図的な敗退行為をした疑いがあるとした。
実名は伏せているが、これらの選手には四大大会優勝者も含まれていると伝えたことから、騒ぎはますます大きくなった。
英国などのブックメーカー(賭け屋)で賭けの対象となっているテニスは、個人戦が主体のため試合結果を操りやすく、賭博組織の標的になりやすい。男子世界ランク一位のジョコビッチ選手(セルビア)が、若手だった〇七年に自身のチームスタッフを通じて八百長を持ち掛けられて断ったことを明かしているように、試合結果の操作は以前から日常的に行われているようだ。
ただ、テニスは昨季の世界ランク百位の選手でも年間賞金三十五万ドル(約四千二百万円)を獲得しており、実力ある選手が一試合五万ドル(約六百万円)程度といわれる報酬で敗退行為をするとは考えにくい。一部の不正疑惑から、テニス界全体に疑いの目が向けられてしまったのは残念だ。
問題は選手のみならず、九年前に調査結果が出た時点で徹底した対処をせず、公表して警鐘を鳴らすこともしなかったテニス諸団体にもある。ITF、ATPなどは〇八年に不正監視団体のTIUを設立したが、八百長根絶に向けた抜本的な対策をとることはできなかった。
今回設立した第三者委員会は、TIUの透明性や独立性を高めて、構造改革について提言もすることが目的という。いわば不正監視団体をチェックするための機関で、対応が後手に回っている感は否めない。
世界の現役プロテニス選手は約二万一千人といわれる。すべての監視は無理でも、不正に対しては透明性をもって対処し、選手教育などの対策を重ねていくことが、八百長撲滅への第一歩となる。
この記事を印刷する