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テクノロジーは音楽業界を救うのか?

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これまでレコードやCDを店舗で販売することで商売を成り立たせていた音楽業界。しかし現在、インターネットの発達によってその形は激変。iTunesなどといったオンラインプラットフォーム上で無限に曲を売買することができるようになった。また最近ではApple MusicやSpotifyをはじめとする音楽ストリーミングサービスによって、一曲ずつダウンロードすることすら時代遅れになり始めている。

しかし誰もが好きな音楽をいつでもどこでも楽しめるようになったものの音楽市場の規模は縮小を続けている。音楽業界を危機的状況に追い込んでいるテクノロジーであるが、最近ではストリーミングによってテクノロジーと音楽が共存する時代が来ると期待され始めた。果たしてテクノロジーの発達は音楽業界を壊してしまうのか、それとも音楽市場の全盛期を蘇らせるのだろうか。

メディア別アメリカ国内の1人当たりが1年で音楽に支出する金額

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音楽市場はどれほど危機的状況なのか

デジタルレコードの割合が増加するにつれて市場全体が縮小を続けていることから、2009年のピーク時と今を比べるとその規模は64%も減少しており、危機感を感じずにはいられない。

音楽市場の縮小はアメリカだけの問題ではない。世界最大の音楽市場を誇っている日本でも縮小が進んでいる。下のグラフをみてもわかるようにアメリカ同様、日本の音楽市場全体の収益は2008年以降から減少し続けている。

日本国内の音楽ソフト・有料音楽配信の売上推移 (億円)

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爆発的に成長するストリーミングサービス

しかしそんな危機的状況にある音楽市場にも追い風が吹き始めている。その風を起こしたのは音楽ストリーミングサービスだ。

音楽ストリーミングサービスとは何か

音楽ストリーミングサービスとは月額制で音楽を無制限に聞くことが出来るサービスのこと。日本ではサイバーエージェントとエイベックスが共同出資したAWAやLINEのLINEミュージックなどが例として分かりやすいだろう。しかし規模として海外のサービスと比べれば契約アーティスト数や登録者数は少なく音楽市場の救世主としては聞こえにくいかもしれないが、海外音楽ストリーミングサービスへの登録者の規模は大きく音楽市場からも期待が寄せられている。

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【代表的サービスとそのユーザー数】

Pandora: 2億5000万人 (有料: 330万人)
Spotify: 7500万人 (有料: 2000万人)
Amazon Prime Music: 有料: 6400万人
Apple Music: 有料: 1000万人

成長率は怒濤の367%

2008年から2013年の世界全体のデジタルミュージックの成長をみるとモバイルを除いた全てのカテゴリの収益が上がっている。なかでもストリーミングの成長率は群を抜いており、その増加率は367%にものぼる。2012年から2013年の1年のスパンでみても月額制の音楽配信サービス利用は50%以上も成長をしている。

デジタルミュージックの収益と伸び率 (2008年~2013)

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メディア別音楽コンテンツの売り上げ

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ストリーミングが音楽市場を救う!?

月額制のストリーミングサービスへの登録者数は増えているものの、音楽市場としては減少傾向にあると説明してきた。実際1人当たりが音楽に費やす金額のピークは1999年の64ドルであったものが2015年には約50ドルにまで落ち込んでいた事実もある。

しかしCredit Suisse estimateは今年からストリーミングが急成長すると同時にその収益規模が拡大すると見込んでいる。というのもSpotifyの登録料は年間120ドルとこれだけでも単純に音楽に費やす金額がこれまでの約2倍になる。さらいにこういったストリーミングサービスへの有料会員数が増加し続けると期待されておりその数は2020年に達すると5億人、音楽市場の規模は1億6000万ドルにのぼると予測されている。

音楽市場の収益推移

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しかし懸念は残り続ける...。

ストリーミングが成長し続けることで音楽市場の規模が回復しピークに近づくということを述べた。しかし、それを絶対と決めつけることも危険だ。というのもストリーミングサービスへの登録者が世界最大であるスウェーデンの音楽市場の成長グラフを見てみてもその成長幅は4.2%。スウェーデンではネットユーザーの67%がストリーミングサービスを利用している。それにも関わらず去年と比較して市場の成長幅が4.2%と言われると、収益の面で不安が残る。

スウェーデンの音楽収益推移

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変革期に立たされている音楽業界

音楽市場全体を見てみても、全体売り上げに対してCDやダウンロード、ストリーミングといった音楽コンテンツの売り上げの割合は2000年の60%から2013年の36%へと格段に下がっている。と同時にライブパフォーマンスなどのソフトコンテンツ以外での売り上げ割合がアップしている。

テクノロジーの進化により音楽業界は大きな変革期に来ている事は間違いない。それに伴いアーティストやレーベルなど、音楽に関わる人々や企業はビジネスモデルの変更を強いられるだろう。デジタル革命によりこれまでの販売/収益源が終わりを告げ、エンターテイメント業界にも革命が進む。恐らく向こう3年間が大きな変革期だと考えられる。

まとめ

音楽市場とテクノロジーの共存方法についてはしばしば議論が繰り返されて来た。そこにストリーミングという次世代の音楽の楽しみ方が登場しはじめている現在、「音楽市場は回復する!」との期待から脚光を呼んでいる。しかし未だ疑心暗鬼な状態を払拭するには十分とは言えない。

スウェーデンの音楽市場の先進性は1つの例として他の国の舵取りを大きく左右して行くことになるだろう。どの企業や国がどんなモデルで音楽市場を復活させるのか期待が膨らむ。もちろん今回の予測では十分でない点はある、今後ともbtraxでは音楽市場と最先端テクノロジーの関係性、トレンドの実態を探る。

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