久しぶりに溜池山王のホテルのバーで、
ワイルドターキー13年のボトルを入れた。 

 

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ここに通いだしてから、今年で11年目になる。

投資銀行で働きだしてからの期間、ほぼそのままだ。
間違いなく、30本はボトルを入れたはずだ。 

 

きっかけは、当時、隣のアーク森ビルにある、

上場準備中のクライアントの担当をしており、

時々、このホテルを仕事で使う様になり、

そのまま使っている。

(そのクライアントは2005年に無事上場した。)

 

近くには、グランドハイアットや、その後リッツカールトンも出来たが、

浮気せずにこのホテルのバーを使っている。

当初は36階のスカイラウンジだったが、昨年から3階のメインバーに移った。

 

個人的な嗜好ではあるのだけど、私はほとんどバーボン一辺倒だ。

明大前の大学教養課程に通っていたとき、初台の4畳半風呂なし共同トイレ家賃2.2万円のアパートに住んでいたが、新宿から歩いて来れるので、よく終電逃した友人が良く転がり込んで来た。

 

そのうちの一人がある日、
 

「親父のサイドボードにある酒、だまって持って来た。これ飲もうぜ。
なんかニワトリみたいな絵が描いている。」
 

これがワイルドターキーとの最初の出会いだった。おそらく最初に飲んだウイスキーである。焼ける感じとトウモロコシの風味が良く、既にこれはニワトリでなく七面鳥であることなど、どうでもよかった。こんなうまい酒があるのかと。それ以来の七面鳥との付き合いである。

 

しかしブームは去ってしまい、それ以降盛り上がることもなく、バーでバーボンばかり飲んでいるのは私くらいらしい。

 

クライアントが上場した時のお祝いも、自分の誕生日も、

お袋が亡くなった時も、案件が取れなかった時も

要は

嬉しい時も哀しい時も、そばにいてくれないとダメな酒なのだ。

 

私が、自分でファンドを立ち上げた時、お祝いにシャンパンを

開けてくれたバーテンは、

今はすっかり偉くなりメインバー、スカイラウンジの責任者になっている。

 

 

 

ご存知の通り、ホテルのバーのボトルの値段は、スーパーの10倍以上である。

 

ウイスキーだけを飲みたいのであれば、

スーパーで買って、家で飲めばいいだけの話である。10本買える。

しかし私は家でウイスキーを飲むことはない。
 

 

ホテルのバーとは何を売っているところなのか。
 

 

バーテンとの楽しいコミュニケーションもあるだろうし、

仕事でもプライベートでも、大切な人との大事な時間かもしれないし、

あるいは、誰にも邪魔されず自分と向き合う場所なのかもしれない。

 

それはおそらく一生かかって、最後にわかるものなのだろう。

 

 

仕事をしていれば、当然良い時も悪い時もあるだろう。

私はこのホテルのバーテンに、かなり助けられた。
 

10年通っているということは、

リーマンショックも経験しているということである。

リーマン前に羽振りが良かった外資の連中は

、ことごとく居なくなったらしい。

その後、すぐ近くにサムスンがあるので、しばらくは幅を利かせていたが、

今は見る影もないという。

 

私も会社を起こしてから、
しばらく行けない時が2年くらいあった。

でも、なんとか業績を戻し、久しぶりにバーに行ってみたら、

 

「田中さん、お帰りなさい。お待ちしてました。」

 

と笑顔で迎えられ、以前のボトルが出てきたのである。

 

驚いた私はバーテンに聞いた。
 

「なぜ、ボトルを残してくれていたの?」

「田中さんは、自分のお金でお飲みになられていたからです。
必ず、またいらっしゃると思ってました。」

 

その時、私は「このホテルのバーと一生付き合って行こう。」

と決めた。

 

会社のカネで飲んでいるヒトは、会社の業績や人事に大きく影響を受けるが、
自分のカネで飲んでいるヒトは、行きつけのバーを裏切らないらしい。

 

なるほど。

カウンターの中から見える景色と言うのは、結構、本質が映っているのかもしれない。

 

オトコは40過ぎたら、行きつけのホテル、バーを持つことは大事だと思う。

やはり、この場所で学ぶことは多い。

そして一番大事なこと。

それは「自分のカネ」で飲むことだ。



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