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【社説】

中国経済の減速 国有企業の整理急げ

 中国経済の減速が止まらない。製造業の不振が深刻で、通貨元安や株安が世界市場を混乱させている。癒着の温床で非効率な国有企業の整理統合や当局と市場の対話に力を入れるべきであろう。

 「日本への買い物ツアーはしばらく我慢です」。百万元(約千八百万円)を株式運用して利益を上げてきた上海日系企業の中国人幹部は、株急落にため息をついた。

 上海株は年明け早々、導入したばかりの「サーキットブレーカー」制の発動で二度も取引全面停止の異常事態になった。上海株は二十六日も急落し、総合指数は昨年末比で約22%も下落した。

 昨夏の株価急落の対策で、中国は大株主による株売却を半年間禁じた。年明けの売却解禁で強まる売り圧力を、新制度で回避できるとの読みは裏目に出たといえる。

 取引停止への恐怖感から、目先の利益を追う個人投資家の多い中国市場はパニック売りに見舞われた。市場との対話を欠く「官製相場」の限界を露呈したといえる。

 中国経済減速の要因は、製造業の過剰設備、膨大な住宅在庫、地方政府の債務など多岐にわたる。

 特に、発展を支えてきた製造業には、人件費高騰や過剰設備という構造的な難題が横たわる。

 李克強首相は「腕を切る覚悟で設備投資を解消せよ」と号令をかけたが、過剰生産された鉄などがコスト割れの安さで出回り、世界のデフレを加速させている。

 何より取り組むべきは、党や政府と癒着し非効率な国有企業の改革である。整理統合が進まなければ不正常な市場寡占が続き、「大衆創業」のかけ声とは裏腹に、民営企業の活力は生まれない。

 中国は昨秋、競争力のない自動車メーカー十四社の生産資格を停止した。持続的成長のためには、生産実態のほとんどない「ゾンビ企業」といわれる国有企業の市場からの退出を急ぐべきである。

 ネット通販などサービス業の伸びは堅調である。技術革新や個人消費の伸びが経済を引っ張る新成長モデルを模索してほしい。

 中国の成長鈍化は世界経済へも大きな逆風である。日本の対中輸出は昨夏以降、前年割れが続く。

 経済大国となった中国には、世界の経済秩序との協調をもっと重視してほしい。市場シグナルを反映した為替相場に移行させ、始動したアジアインフラ投資銀行(AIIB)の運営でも、中国主導ばかり強調せず、開放的で透明なやり方を心がけるべきであろう。

 

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