2016/02/09 08:35:09

自転車でオフィスに通う世界一若い億万長者「日本人はいつまで満員電車に揺られて職場に向かうのか。」

John Gibson Photo

最近では、少しファッション的な感覚もあるのか、東京でも自転車を積極的に使う人達が増えてきていますが、「世界で一番自転車にやさしい都市」と呼ばれるデンマークの首都コペンハーゲンや、「自転車の台数が人口より多い」と言われるオランダ、そしてロンドンを走る車の平均速度が13〜15キロで100年前の馬車よりもスピードが遅いとバカにされ、1996年の「国家自転車戦略」を通じて、自転車を一気に普及させたイギリスなどに比べると、日本はまだまだ遅れを取っているのかもしれません。

自転車天国であるデンマークの調査によれば、自動車は1キロ走るごとに約20円の社会的損益を生み出しますが、自転車は1キロ走るごとに約28円の利益を生み出し、アメリカのコロラド州では自転車にやさしい環境を作ることで、年間約1000億円の経済効果があったと言われています。

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アメリカで450人ほどを対象に行われた調査によれば、自転車に乗るように心がけることで、一人あたり年間約4万5000円の健康維持にかかるコストを削減することができ、イギリスの英国医師会は、週に15キロ自転車に乗る人は、そうでない人に比べて、冠状動脈性心臓病になるリスクが50%低くなると伝えていますが、健康上の理由からも、ハーバード大学でマーク・ザッカーバーグとともに、フェイスブックを立ち上げて、世界一若い億万長者になったDustin Moskovitz氏が、今だに仕事には毎日自転車で通っているのは十分に理解できます。

また、家入一真さんは「お金が教えてくれること」という本の中で次のように述べています。(1)

「ある経営者が言うには、昔は銀座のクラブにベンツで乗り付けたらキャーキャー言われたのに、今じゃマウンテンバイクでサッと現れて、スポーティーな格好で登場したほうが女子のウケがいいらしい。“これどこの自転車ですか?”とか“家から自転車で来たんですか?”とか、めちゃくちゃ反応がいい。経営者なのに自転車っていうギャップもいいんだろう。」

「今の若い女の子たちの価値観は、もうベンツに乗った経営者に向いていないっていうことだよね。なかにはまだそういう子もいるかもしれないけど、それってもう古いんだと思う。」
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日本と同じ島国であり、明治期に日本が多くの交通システムを採用したイギリスは、90年代、自転車の利用率が2%ほどしかなく、利用率が10%〜18%もあるドイツ、デンマーク、スイスなどと比べて、自転車に対する評価が圧倒的に低くかったことから、1996年に国が「国家自転車戦略」を発表、6年後の2002年には自転車利用を2倍、10年の2012年には4倍にするという目標が掲げられ、2012年にはロンドン市長のボリス・ジョンソンが、ロンドンオリンピックを車を使わないエコなオリンピック「Carless Olympics」にしようと声が上がるほどに意識が高まりました。(2)

特に自転車が積極的に導入される前のロンドンは、渋滞や地下鉄が思うように機能しておらず、交通機関から生じる経済損益は当時の額で1週間に約3億円〜7億円だったとも言われており、これを何とかしようとするイギリス国家の意思には、ものすごいものがあるとして、ジャーナリストと秋山岳志さんは次のように述べています。(3)

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「イギリスの自転車政策を見て考えさせられるのは、どんな困難に直面しても、自転車を優遇するインフラと制度を作っていくのだ、という強固な意思である。道路の狭さという空間的な制約、ドライバーや商主からの反発、そういったものはイギリスでも日本でも多かれ少なかれ存在するわけだが、あくまでひるまずに突き進んできたところに、現在の両国間の格差が生まれたのではないか。」

実際、高速道路を1.6キロ作るためには平均約60億円の費用がかかりますが、同じ距離の自転車専用のレーンは仮に最高級のクオリティーで作ったとしても、かかる費用は1700万円〜2500万円でメンテナンスに必要なコストも高速道路に比べてかなり少なくて済みます。

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また、現在、全米でもっとも住みやすい街として知られるオレゴン州のポートランドは、自転車都市として知られていますが、街の人達は、車や交通機関を使わないことで浮いたお金をオーガニックフードなどの価値のあるものに使っており、さらにポートランドに住む人達は、他のアメリカの都市に比べて移動する距離が年間17億キロも少なく、時間に換算すると年間1億時間、費用は2600億円もの節約になっていると言います。

日本での自転車通勤は、通勤許可の手続きが複雑であったり、会社の総務部が通勤の事故なども懸念して、自転車通勤に積極的ではないため、スーツ姿で丸の内や新宿の摩天楼を自転車で駆け抜けるビジネスマンはあまり見かけません。

しかし、通勤ラッシュに巻き込まれる人が受けるストレスは、臨戦態勢の戦闘機のパイロットや機動隊員が受けるストレスよりも大きいと言われるくらいですから、自転車がヨーロッパの街のように東京にも普及すれば、街の雰囲気もかなり変わってくると思いますが、東京の人達は一体いつまで満員電車に揺られて職場に向かうのでしょうか。

参考: 1.家入 一真「お金が教えてくれること ~マイクロ起業で自由に生きる~」(大和書房、2013年) P59-60 2.秋山岳志「自転車が街を変える」(集英社、2012年) Kindle P775 3.秋山岳志「自転車が街を変える」Kinde P196
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