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【社説】

国会代表質問 「建設的議論」はどこへ

 安倍晋三首相の施政方針演説に対する各党代表質問。野党側は提案を織り交ぜて見解をただしたが、首相は政権が進める政策の正当化に終始した。建設的な議論には残念ながら至らなかった。

 首相の「挑発」を意識したのだろうか。きのう行われた代表質問の一番手、民主党の岡田克也代表は「基本的な政策について、私の考え方を明らかにし、提案し、その上で安倍総理に質問します」と強調した上で、各論の質問に入った。

 首相は二十二日に行われた施政方針演説で、民主党を念頭に「批判だけに明け暮れ、対案を示さず、後は『どうにかなる』という態度は、国民に対して誠に無責任」と批判していた。

 野党が「批判だけに明け暮れ」との指摘自体が的外れともいえるが、野党側が提案を交えて論戦に挑むことで、国会での議論活性化につながることを期待したい。

 しかし、それも首相の態度次第である。

 岡田氏は与党が成立を強行した安全保障関連法について「集団的自衛権が行使できるとの政権の考え方は憲法違反」として、安保関連法廃止法案や、武力攻撃に至らない事態に対処する領域警備法など独自の法案を今国会に提出する考えを表明した。

 これに対し、首相は安保関連法が「憲法に合致することは言うまでもない」と、岡田氏の主張を一顧だにせず、「法案を提出するのなら全体像を一括して示してほしい」と、逆に注文を付けた。

 子どもの貧困対策や格差是正策も同様に一方通行だった。

 岡田氏は就学援助や児童手当の増額、富裕層への課税強化などを提案したが、首相は「総合的な取り組みを充実する」「引き続き考える」などと、提案を検討する姿勢は最後まで示さなかった。

 これでは首相が呼び掛けた「建設的な議論」にはなり得ない。

 国会は、議論を通じて国民にとってよりよい政策や法律をつくり出す、国権の最高機関である。

 安倍政権側には野党の提案や批判を真摯(しんし)に受け止める度量を、野党側には政府を監視する厳しい目と、建設的な提案を引き続き求めたい。

 甘利明経済再生担当相の金銭授受疑惑について、首相は「事実関係をしっかりと調査し、国民に説明責任を果たしてほしい」と答弁した。どこか人ごとだ。

 事実なら国民を裏切る許しがたい行為だ。首相は自ら真相解明に指導力を発揮すべきである。

 

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