大阪市育鵬社教科書採択、フジ住宅「ヘイトハラスメント」問題の影響か?

 フジ住宅(大阪府岸和田市)の「ヘイトハラスメント問題」に関連して、フジ住宅が2015年夏の中学校教科書採択の際、社会科教科書で極右的な育鵬社を採択させるようアンケートを組織的に記入させた件について、究明を求める陳情書が大阪市会に出された。

 「子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会」が2月10日付で、『フジ住宅(株)が育鵬社教科書の採択運動をし、大阪市教育委員会の審議に反映させた件につき、真相を究明し責任を明らかにする陳情書』と題して提出した。

 「ヘイトハラスメント」問題では、育鵬社教科書の母体勢力でもある「日本教育再生機構」に関与している会長のもと、業務には関係ないのに民族差別的な文書が社内で配布されるなどの差別・パワハラ行為があり、従業員が提訴する状況になっている。

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 「ヘイトハラスメント」の一環として2015年夏には、2016年度から使用する中学校教科書の採択時期にあたっていたこともあり、従業員に対して「業務時間内に教科書展示会場に行き、育鵬社教科書を採択するよう求める文章を書く」という指示を出していた。

 進行中のヘイトハラスメント訴訟で、教科書アンケートについてフジ住宅が指示していたとする証拠資料が明らかになったことを受け、「子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会」がこれを問題視し、真相究明を求めている。

 陳情書によると、大阪市の教科書展示会場では、フジ住宅関係者が各会場でアンケート用紙に記入するとともに、白紙のアンケート用紙少なくとも1200枚を一度会社に持ち帰っていた。会社側は社内で例文を示して記入させ、再び展示会場に行かせて投函させていたという。

 アンケート用紙の記入形式は各会場ごとに異なっていたが、いずれも住所氏名などを記入する欄はなく、同じ人物が大量に投函することも可能となっていたと指摘した。裁判で明らかになった資料によると、各従業員は1回ごとに複数枚を投函し、合計すると少なくとも600枚前後がフジ住宅関係者の手によるものという計算になると指摘している。

 大阪市での教科書アンケートの回収枚数は合計779枚と発表されているので、フジ住宅関係者の記入が疑われるものが大半を占めるということにもなる。

 また大阪市は「採択にあたっては、教科書展示会でのアンケートの結果を重視する」という方針を出していたこともあり、フジ住宅関係者にその方針が漏れていた可能性も指摘している。「会」では、以下のような内容を求めている。

大阪市教育委員会は、フジ住宅が組織的に行った採択運動のきっかけとなった、「大阪市の(昨年の)教科書採択については、アンケートが決めてとなる」という情報がどこから育鵬社へ流出したかを究明し、また不正を許すアンケート方法と集計、昨年8月5日採択委員会へ数値を報告することなどを自らが決めた経過、またアンケート用紙に記入された内容など、情報すべてを開示し、その責任を明らかにしてください。

 大阪市は教科書アンケートの結果について、「社会科教科書について言及したもののうち、約3分の2が育鵬社教科書に肯定的なものだった」と発表した。

 しかしこれは、他地域には例を見ない異様な比率といえる。大阪府河内長野市では、教科書展示会に寄せられた意見について、社会科教科書に触れた内容のすべてが育鵬社やその亜流の極右教科書に否定的だった。また京都市での教科書アンケート結果の記述を当方が確認すると、社会科教科書に触れたもののうち9割近くが育鵬社・極右教科書に否定的な内容で、育鵬社などに肯定的な意見は1割前後しかなかった。

 大阪市での教科書アンケートの結果については、発表当時から不審に感じていた。今となっては、フジ住宅の「ヘイトハラスメント」問題が明らかになったことをあわせて考えると、このことだけが唯一の要因ではないのだろうが、「ヘイトハラスメント」問題がアンケート結果を左右する大きな要因のひとつとなったのではないかと考えてもおかしくないだろう。またアンケート結果を受けたことが育鵬社教科書が採択される口実のひとつともなっていて、結果的にフジ住宅の組織的行動が、採択がゆがめられた間接的な要因の一つとなった可能性も推測される。

 育鵬社教科書については学問的にも一方的な記述が多い上に中身も反民主主義的で、ヘイト勢力との親和性も高い。フジ住宅問題に加えて、レイシストが「育鵬社教科書採択を求める」という口実でヘイト宣伝をおこなう事件も発生している。

 大阪市教育委員会がこのようなヘイト勢力と同調した形になり、形式上の手続きは踏んでいるように見せかけても中身は不適切といえるような方法で不適切な教科書を採択したことは、きっちりと究明されるべきではないか。

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