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【西論】
挫折した橋下維新 しばらく“引退”し足元の大阪改革、議論からやり直せ 編集長・近藤真史
問責決議案を不発に封じ込めたとはいえ、橋下徹大阪市長にとって5月定例市議会は、はなはだ不本意なものだったろう。大阪市の水道事業を大阪広域水道企業団に移管する水道統合案は否決され、市営地下鉄、バスの民営化案は3月に続いて継続審査とされた。橋下市長が提案した議案が否決されたのは就任以来初めてだ。
最近、日本維新の会共同代表として憲法改正や歴史認識をめぐる積極的な発言が続いた一方で、橋下氏が大阪市政の懸案解決に向けて取り組む姿はあまり見られなかった。
「大阪維新の会が議会の中で議論してコンセンサスを得るのが基本」(橋下氏)とはいえ、参院選前の難しい時期である。維新にポイントを与えたくない野党会派の思惑をはね返すパワーを市議団に求めるのは無理だ。市長選の公約にも掲げた看板政策だけに、橋下氏が市議会内外でもっとアピールする必要があったのではないか。
メッキ剥がれた大義…コスト削減、近道は水道場廃止
府内42市町村が運営する大阪広域水道企業団と大阪市水道局が持っている浄水施設の処理能力は1日476万立方メートル。これに対し、平成42年度の水需要は約280万立方メートル。危機管理のために若干の余裕を持たせても約3分の1の施設は不要になる。企業団と市の施設をトータルで考えて効率化を図るとともに、一体的な運用で人件費の削減や緊急時の対応をスムーズに進めようというのが、水道統合の狙いだ。
一見もっともらしいのだが、一番古い大阪市の柴島浄水場を全廃すると新たな送水管の整備などで逆にコスト増になってしまう。このため、企業団が持っている村野浄水場(枚方市)なども一部廃止することにした結果、わざわざ統合して水を融通しなくても、大阪市と企業団がそれぞれ管内の水需要をまかないながら施設を削減できる計画ができあがってしまった。