日本一の書評
2016年02月14日(日)

どうなる?「2045年問題」
最先端の人工知能に対する人間の存在価値は何か

週刊現代
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[Photo:istock]

文/熊谷達也(小説家)

2000年問題、2007年問題、2010年問題、などといった、いわゆる「年問題」が時おり話題になったり世間を騒がせたりするものの、しばらくすると、えーとそれって何だっけ?となるのは私だけだろうか。

ちなみに、2000年はコンピュータの誤作動、2007年は団塊の世代の一斉退職、2010年は医薬品の特許切れ他、をそれぞれ指していたのだったとは、この原稿を書くために調べ直してみて、そういえばそうだったなと、思い出したという次第。というくらい「年問題」には空騒ぎのケースが多いような気がするのだが、それに懲りず、最近私が個人的に気になっているのが「2045年問題」である。

2045年問題 コンピュータが人類を超える日』によれば、映画『2001年宇宙の旅』において、宇宙船ディスカバリー号に搭載された人工知能HAL9000型コンピュータが暴走したような、これまではSFの世界の話でしかなかったことが、現実として起こる可能性があるという。

未来のある時点でコンピュータ技術が爆発的に発展し、それより先はコンピュータの行く末を人間が予測できなくなるという仮説があり、アメリカのコンピュータ研究者レイ・カーツワイルが、その「技術的特異点」が2045年にやって来ると主張したことで「2045年問題」と呼ばれるようになったとのことだ。

本書は、この問題を専門家でも何でもない私たち一般読者に分かり易く紹介している。紹介しているというよりは、警鐘を鳴らしている、としたほうが正確かもしれない。

しばらく前の「2位じゃダメなんですか?」で話題になったスーパーコンピュータの話題から始まって、果たして意識を持つ人工知能は誕生するのかという問題へのアプローチ、さらには技術的特異点後の未来はどうなるのかの予測に至るまで、まるでサスペンスドラマを追っているように、刺激的で面白く、そしてやがて来る未来を憂えてしまう。

2045年といえば、今から29年後の世界だ。自分が生きているかどうか若干微妙な未来ではあるが、その日がやって来た時、「なんだ、空騒ぎだったのね」と笑えればよいのだが・・・・・・。

などと思いつつ、一度気になりだすと、同じ題材を扱った本を次々と読みたくなる。そうして漁った中の一冊が『AIの衝撃 人工知能は人類の敵か』だ。本書もまた、AI、つまり人工知能の可能性から始まって、最終的には人間の存在価値は何か? という問いかけにまで至っているのだが、最新のAI技術がここまで進歩しているとは、本書を読むまで、迂闊にも知らないでいた。

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