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【ダ・ヴィンチ「糸巻きの聖母」】「モナリザ」と並ぶ傑作から透けて見える天才ダ・ヴィンチの「理想」とは…

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【ダ・ヴィンチ「糸巻きの聖母」】
「モナリザ」と並ぶ傑作から透けて見える天才ダ・ヴィンチの「理想」とは…

レオナルド・ダ・ヴィンチ「糸巻きの聖母」1501年頃、バクルー・リビング・ヘリテージ・トラスト (c)The Buccleuch Living Heritage Trust レオナルド・ダ・ヴィンチ「糸巻きの聖母」1501年頃、バクルー・リビング・ヘリテージ・トラスト (c)The Buccleuch Living Heritage Trust

 イタリア・ルネサンス期に現れた万能の人、レオナルド・ダ・ヴィンチ。現存する彼の真筆絵画は、世界で15点に満たないと言われているが、「岩窟の聖母」「最後の晩餐(ばんさん)」「聖母子と聖アンナ」「モナ・リザ」と並んで生前から最も高い評価を得ていたのが、いま日本で初公開されている「糸巻きの聖母」(1501年頃)だ。この傑作を通して、ダ・ヴィンチが目指した理想を探る特別展が、東京都墨田区の江戸東京博物館で開かれている。

 十字架を思わせる糸巻き棒に、幼子イエスは夢中だ。そのさまを聖母マリアが心配そうに見守っている。後に磔刑(たっけい)となる彼の過酷な運命を察したのだろうか。聖母子と前景の岩はダ・ヴィンチが描き、背景は後世の加筆とされている。

 「聖母子の肌を見ると、薄い顔料でベールを重ねるように、何度も塗り重ねているのがわかります」。展覧会を監修したレオナルド・ダ・ヴィンチ理想博物館のアレッサンドロ・ヴェッツォージ館長が説明する。輪郭をぼかして物体の厚みや深みを出す「スフマート」により、すべらかで弾力のある肌が輝いて見える。後の傑作「モナ・リザ」でもおなじみのダ・ヴィンチの技だ。

 近年の赤外線調査により、下描き段階からの詳細な変化もわかるという。例えば糸巻き棒には糸が掛けられ、紡ぎ糸の入った籠も描かれていたが、最終的にこれらは省かれ、十字架の形状が強調された。ただしヴェッツォージ館長は「糸巻き棒はキリスト教の聖なる象徴だけにとどまらない、もっと普遍的で大きな世界を表したもの」と語り、「古代ローマの神話に登場する『人間と世界の運命を織る』道具として描かれたものでは」と見る。

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