東アジアの歴史論争を「史実的アプローチ」で解き明かす

金翰奎・西江大学名誉教授、『東アジア歴史論争』を出版
韓国・チベット・ベトナム・モンゴルなど7民族と中国の歴史をめぐる争いを客観的・多元的に整理

東アジアの歴史論争を「史実的アプローチ」で解き明かす

 歴史学者、金翰奎(キム・ハンギュ)西江大学名誉教授(65)の主な研究テーマは、かつて東アジアを律していた「中国的な世界秩序」だ。金教授は、恩師の全海宗(チョン・へジョン)西江大学名誉教授から引き継いだ学問的な糸口を捉えて生涯取り組み、『古代中国的世界秩序研究』『古代東アジア体制研究』『天下国家-伝統時代東アジア世界秩序』などの著書を送り出してきた。この過程で、自然と中国の周辺地域にも関心を持つようになり、『韓中関係史』『チベットと中国』『遼東史』などの研究書も書いた。

 『東アジア歴史論争』(マツの木社)は、定年退任を迎えた金教授が、これまでの学問的成果を基に、韓国・チベット・ベトナム・台湾・ウイグル・モンゴル・日本の7民族と中国の歴史をめぐる争いを整理した著書だ。これらの民族は中国の「辺境」に位置し、中国と歴史論争を繰り広げており、そのうちの相当部分は領土をめぐる争いとも関連して激しく対立している。これらの争いは、中国政府が56の民族からなる「統一的多民族国家」を維持するためにつくった「中国史の範囲は現在の中華人民共和国の領土を範囲とする」という方針を、中国の学界が忠実に守ったことで発生した。

 中国と周辺民族との歴史争いを客観的に分析した同書は、全ての当事者にとって都合が悪い。近代国家間の関係とは異なり、複雑に絡み合っている伝統的な東アジアの国家間関係を、あるがまま明らかにしているからだ。「政治に服する歴史」が示す一面的真実に慣れた人々にとって、有機的かつ多元的な関係はなじみのないものだ。歴史をめぐり、対立にとどまらず戦争まで起こす立場からすると、こうした分析は戦闘力を弱め、時として利敵行為という批判も受ける。しかし、戦争に勝つためにも、敵を知るべきだ。歴史論争の中心的な争点を把握するに当たっては、冷徹な学問的アプローチがさえを見せた。

李先敏(イ・ソンミン)先任記者
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