皆さんの会社では、海外勤務を終えて帰国なさった方が、その後「会社を辞めちゃうケース」はありませんか?
先日の大学院ゼミでは、海外派遣帰任者の帰任後のケアに関する論文を読みました。
先日読んだ英語論分によれば、
海外勤務を終えて帰国した人の離職をふせぎ、いかに雇用持続させるか?
は、海外での事業拡大をめざす企業にとって、いまや非常に大きな関心事になっているといいます(Lazarova and Caligiuri 2002)。
多国籍企業にとって、海外派遣は、事業継続のために必要なことである一方、従業員の能力形成の手段として用いられるからです。
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しかし、海外派遣は「諸刃の剣」でもあります。行ってバリバリ仕事をしているときはよいのですが、帰任後、問題を抱える場合が少なくないのです。
最悪の場合、離職につながることもあるので、注意が必要です。先だっての論文には、海外派遣帰任者の12%は年内に辞める。次の年に辞める13%。要するに、2年間で25%は離職する、というデータが紹介されていました。
興味深かったのは、このことをTwitterでつぶやくと、某人材開発部長のOさんから、こんなメッセージをいただきました(Oさん、ありがとうございます)。
「結果的に離職しなかったものの、帰任後にこのままでいいのかという思いが湧き上がった人も入れると相当数が離職を考えたと思います」
そうだよなぁ、、、わかる気もしますね。
自分を振り返っても、自分の周りの友人の様子を見ても。。。
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海外でつとめた人材が「会社を辞めちゃう」理由としては、この論文内、論文外でも、様々に述べられています(海外帰任研究というカテゴリーですね)。
1)海外に比べて挑戦性のない仕事がわりあてられる
2)海外で培った経験やスキルが活かせない
3)海外にでているあいだに昇進機会の喪失
4)海外のように自律的な仕事を行うことができなくなる(降格のように感じる)
5)キャリアが不透明になる
6)同僚からのやっかみ
7)同僚、本社の人的ネットワークからの離脱
8)本国文化への逆適応への失敗
などです。
「4)海外のように自律的な仕事を行うことができなくなる(降格のように感じる)」はありえるような気がしますが、それにしても「6)同僚からのやっかみ」とか、あるのかなぁ・・・意外!
ちなみに、先ほどの同論文では、「帰任後の組織からの各種の支援」を独立変数に設定し、従属変数:リテンションとの回帰分析を行っておりました。
「帰任後の組織からの各種の支援」といいましょうか、帰任者に対する目配りは、やはり大切なようです。
要するに
海外勤務を終えた人には、しっかりとした面談をとり、その後の仕事をしっかりと割り当てること
が重要だということですね。
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ゼミでは、その後、いろんな議論を行いましたが、この状態は、なかなかシンドイな、ということになりました。
事業規模や経緯にもよりますが、海外の事業をうまく回すためには、それなりの人材を派遣しなくてはなりません。でも、たとえば、エース級(As)人材を割り当てた場合、それで離職につながってしまうのだとすると、やはり、そこには「躊躇い」が生じます。しかし、ビース(Bs)!?、とか、シース(Cs)級人材では、海外の事業を安心して任せられない。
特に、昨今の海外事業における人材は、かつての「生産の現場を指導する人材」というより、むしろ「海外の子会社をマネジメントする人材」の方に軸足がうつぅてきています。海外に派遣する人材、そこで求められる人材が「高度化」しているのです。
一連の海外帰任研究の知見によりますと、帰任後の離職もそうですが、赴任中の離職も、3割程度と言われています。特に、海外の組織に異動したあとで、初期適応に失敗したり、互角やマネジメント能力などの、能力不足が顕在化するケースが多い印象です。
ということは、やっぱり、海外事業を行うのであれば、帰任後のキャリアとか視野にいれて、海外派遣をしなければならないことになりますね。覚悟をしなくてはなりませんね。
一方、また、ゼミの中では、As人材をリテンションさせるというのは、そもそも難しい、のであきらめるのも選択肢だ、という意見も聞かれました。
だから、どうせやめるのだから、思い切って、挑戦の舞台を海外に与える、ということです。
この問題、皆さんはどう思いますか?
皆さんの会社では、海外勤務をなさった方は、帰任後、どのように仕事をなさっていますか?
海外勤務を終えたみなさんは、帰任後、一度は、会社を辞めたいと考えたことはありますか?
そして、人生は続く
(本記事は、中原の個人ブログ「NAKAHARA-LAB.NET」に掲載され2013年12月19日の記事に、加筆・修正を加えたものです)