「Windows 10」はPCやタブレットに限らず、スマートフォン、ゲーム機、IoTデバイスなど、幅広い機器に対応したプラットフォームだ。もっとも、既存のWindows PC(x86/x64)用に作られたデスクトップアプリケーションは、基本的にWindows 10 Home/Pro搭載PCで動作する一方、Windows 10 Mobile搭載スマートフォンでは動作しない。
そこでMicrosoftは、全てのWindows 10ファミリーで動作する単一のアプリプラットフォームとして、「UWP(Universal Windows Platform)」を用意している。UWPアプリであれば、PC、タブレット、スマートフォン、ゲーム機(Xbox One)、そしてヘッドマウントディスプレイ(HoloLens)など、幅広いデバイスで動作させることが可能だ。
本連載で何度も触れている通り、特にスマートフォン用OSの「Windows 10 Mobile」ではUWPアプリの拡充が課題となっている。これは、先行するiOS/Androidに比べてアプリの量と質で劣っているのが現状だからだ。また、UWPアプリはiOS/Androidにない「Continuum for Phones」機能をサポートするというメリットもある。
ミドルクラス以上のWindows 10 Mobile搭載スマホはContinuum for Phones機能を備えており、スマホに外部ディスプレイやキーボード、マウスを接続すれば、スマホ用アプリ(UWPアプリ)をまるでPC用アプリのように利用できるのだ。そのため、UWPアプリの拡充は、iOSやAndroidに追い付くだけでなく、Continuumという強みを生かすために必要なポイントとなる。
MicrosoftはこのUWPアプリを増やすための施策として、iOSやAndroidなど他のプラットフォームのアプリをUWPアプリへ容易に変換できる環境を整えるプロジェクト「Windows Bridge」を進めている。
Windows Bridgeは、iOSアプリ、Androidアプリ、既存の.NETおよびWin32ベースのアプリ、そしてWebアプリからの移行を促すものだが、iOS向け(Windows Bridge for iOS)とWebアプリ向け(Windows Bridge for Web apps)以外は開発が遅れているようだ。この辺りの事情は、本連載のバックナンバーを参照していただきたい。
さて、計画の遅延が指摘されるWindows Bridgeだが、ここへ来て少し明るいトピックが舞い込んできたので紹介したい。Windows Bridgeのツールを使って実際に「iOSアプリを5分でUWPアプリに変換する」というYouTube動画が公開されたのだ。
まずは、iOSアプリをUWPアプリへ容易に移植するための「Windows Bridge for iOS」について、簡単に説明しておこう。これは、iOSアプリのソースコードをWindows 10の開発ツールである「Visual Studio 2015」に取り込んで、将来的にモバイルを含むWindows 10プラットフォーム全般で実行可能なUWPアプリとして出力可能にするものだ。
Windows Bridge for iOS自体はまだ未完成であり、変換元のiOSアプリの全機能が完全にUWPの形式に変換されるわけではない。ただし、Visual Studio上で(iOSならびにOS Xの開発言語である)Objective-Cを直接編集してコードを修正できるほか、Windows Bridge for iOS自体がGitHub上でオープンソースとして無償公開されており、興味のある開発者が自由に触れるようになっている。
オープンソース化は開発者らの興味を引きつつ、バグレポートを含む情報収集による早期の改良を目的としているとみられ、今後の開発スピードアップが期待できそうだ。
さて、こうなると実際に試してみたいと思う人は少なくないはず。オーストラリア在住でMicrosoft MVPの技術者であるデビッド・ブレーラ(David Burela)氏が、実際に同ツールを使って人気のiOSゲームを5分間でUWPに変換したことを自身のブログ上で報告しており、その様子を収めたYouTubeビデオを公開している。
今回の題材となったのは「Canabalt」というゲームだ。アダム・サルツマン(Adam Saltsman)氏によって開発されたシンプルな横スクロールの「エンドレスゲーム」で、操作はジャンプボタンのみ。障害物やアクシデントを避けつつ、ひたすら走行距離を競うゲームだ。もともとはFlashゲームとして公開されていたもので、現在ではiOS版、Android版など、複数のプラットフォーム向けに配信されている。
一方でCanabaltは、2009年にデビューした翌年の2010年時点でソースコードがGitHub上で公開されている。「ならばGitHub上で公開されているソースコードとWindows Bridge for iOS対応のツールを組み合わせて、実際にUWPアプリを使ってみよう」とブレーラ氏が試してみたのが、今回のYouTube動画というわけだ。
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