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育休給付金は、育休中の親に支払われる。このことで育休を推進しようとするものだ。しかし、こんなものは廃止するべきだ。(結論)
なぜか? 理由はいくつもある。
1.巨額すぎる
支払われる額は、元の賃金の 67%で、最大 286,023円。夫婦とも受け取れるので、夫婦で合計 572,046円だ。これは税金がかからないので、給与所得に換算して、月額 60万円以上が支払われる計算になる!
げっ。何という巨額。これほどの巨額の金を1家庭に払うなんて、金の無駄遣いだ。あまりにもひどい浪費。
→ 出典1
→ 出典2
2.児童手当とのバランス
その一方で、児童手当は、3歳児未満の場合、たったの月額1万五千円だ。( → 出典 )
桁違いだ。たとえ零歳児だけでもいいから、十分な額の児童手当を払うべきだろう。たとえ育休給付金を廃止しても、その分、児童手当を払うのなら、問題はないはずだ。
3.公平さ
児童手当ならば、親が育休を取ろうが取るまいが、公平に支払われる。これがベストだろう。
一方、育休給付金だと、次のようになる。
・ 育休を取る親 …… 最大で月額 60万円
・ 育休を取らない親 …… ゼロ
これでは不公平すぎる。特に、次の例が問題だ。
・ 親が薄給で、67%では不足するので、やむなく働く。
・ 親が高給で、ベビーシッターを雇って、自分は働く。
このような親も、ちゃんと子供がいるし、育児もするのだから、それ相応の金額を、公平に支払うべきだろう。なのに、こういう親にはゼロ円しか支払わない。その一方で、「育休を取って遊ぼう」(育休を名分に不倫しよう)と思うような親には、育休給付金がたっぷりと支払われる。(最高で月額 60万円。)
これじゃ、あまりにも不公平だ。金が必要な親にはまったく支払われず、ちょっと必要な親にはたっぷりと過剰なほど支払われる。呆れるしかない。
( ※ ベビーシッターの件は、前項の話題を参照。→ 前項 )
4.保育園との整合性
今、本当に必要とされているものは、何か? 保育園だ。保育園こそ喫緊の課題だ。なのに、保育園は「金がないので建設できません」という形で慢性的に不足状態にしておく。その一方で、育休給付金については、ジャブジャブと余るほど金を注ぎ込む。……これじゃ、整合性がとれていない。
また、金の補助額も整合性がとれていない。
・ 育休給付金 …… 高給の人ほど高額が支払われる。
・ 保育園料金 …… 高給の人ほど料金が高額。
前者では、高給の人ほど優遇される。
後者では、高給の人ほど冷遇される。
方針が正反対だ。アクセルとブレーキを同時に踏むようなものだ。矛盾している。いったい、どうしたいのか? 高給の人ほど優遇したいのか、冷遇したいのか? はっきりするべきだろう。
その点、児童手当ならば、高給でも薄給でも同一の金額が支払われる。これなら矛盾はない。この意味でも、育休給付金なんかよりは、一律の児童手当の方がずっと優れている。
5.雇用保険との関係
給与の 67%もの額を支払うなんて、あまりにも馬鹿げた大盤振る舞いだろう。その金はいったいどこから出てくるのか?
もちろん、雇用保険からだ。(ググればわかる。)
すると、次の問題が生じる。
・ 雇用された労働者しか支払われない。(自営業者はもらえない。)
・ 中高年の労働者の雇用保険料がやたらと高額になる。
これらはどちらも問題だ。若い夫婦の労働者だけは大変恵まれる結果になるが、それ以外の人々は、蚊帳の外になるか、莫大な雇用保険料を支払わされるか、どっちにしても大損だ。
この点、児童手当ならば、国の金が財源なので、最も公平である。「金持ちほど多くの税を払う」という形で、最も公平に財源の負担がなされる。
6.破綻する
給与の 67%もの額を支払うなんて、あまりにも高額の大盤振る舞いだろう。雇用保険を使うからといって、そんな金を出せるのか? 雇用保険は、打ち出の小槌か、無限の泉のように、いくらでも金が湧き出てくるのか? そんなはずはない。
実は、ここにはトリックがある。こうだ。
「 2012年度の育児休業給付制度の利用者は23万7383人」
→ 出典
たったの 23万人程度しか利用していないのだ。
一方、出生数は、101万人である。
→ 出典
ここで、両親がそろって育休を取れば、200万人が育休を取ったはずだ。そのうち、雇用保険の対象は 70% 弱 なので、130万人ぐらいが取っていいはずだ。現実には、23万人程度。5分の1しか取っていない。
逆に言えば、全員が育休給付金を取れば、給付額は5倍になる。当然、制度は破綻する。今は 「67%の支払い」なんて言っているが、支払いの対象者が5倍になれば、67%の支払いは無理だ。制度が破綻するか、支払額が急減するか、どちらかだろう。
要するに、育休給付金というのは、制度としては永続不可能な制度だ。目先の利益をほしがって、金を食いつぶしているようなものだ。馬鹿が身上をつぶしているようなものだ。(小原庄助さん並みだ。)呆れるしかない。
[ 付記1 ]
「じゃ、どうすればいいんだ?」
という疑問には、
「児童手当を充実し、保育園の財源を充実する」
と答える。本文を読めばわかるとおり。そう書いてある。
[ 付記2 ]
そもそも、育休は自己都合で休むものだ。なのに、自己都合で休む人に、雇用保険で支払うというのは、制度としておかしい。
雇用保険は、失業対策のためにある。それは原則、会社都合で解雇された人に支払うものだ。
自己都合の場合も支払われるが、その場合には、退職後の3カ月間は支払われない。また、支払われる期間は 90日間(3カ月間)だ。また、支払われる金額は、元の賃金の 45〜80%だ。
→ 出典
とすると、自己都合の退職では、失業保険は 45〜80%の半額、つまり、月平均して 23〜40% の額しか払われないことになる。
それに比べると、育休給付金の 67%という支払いが、いかに大盤振る舞いであるかわかる。しかも、退職しないのに支払われるのだから、至れり尽くせりだ。
こういうのを雇用保険でまかなうというのは、労働者の金を勝手に横流しするようなものだろう。ほとんど横領罪。犯罪的。(それで損するのは一般労働者。保険料の値上げ。)
[ 付記3 ]
育休でなく産休なら、どれだけもらえるか?
調べてみたら、驚くべきことに、産休の給付金はゼロ同然である。呆れた。育休を取る夫には多額の金を大盤振る舞いするのに、産休を取る妻にはほとんど何も与えない。呆れるばかり。
詳細データは、下記。
→ 産前産後休業・育児休業給付金|期間・金額計算ツール
モデル例だと、こうだ。
(1) 育休では、給付金が 181万円で、社会保険料免除額が 44万円。合計で、225万円ももらえる!
(2) 産休では、出産手当金が 44万円もらえるが、これはほぼ全額が出産費用に消えてしまうので、手元には何も残らない。出産育児一時金が 42万円で、社会保険料免除額が 8万円、合計で 50万円だが、これは、育休を取る人の社会保険料免除額が 44万円なのと、ほぼ同額だ。ま、50万円をもらえることはもらえるのだが、育休を取る夫が 44万円をもらえるのとどっこいであり、その一方、育休を取る夫の給付金 181万円はもらえない。……要するに、育休を取る夫は育休給付金 181万円をもらえるのに、産休を取る妻はたったの6万円しか もらえない。何という差!
( ※ 50万円 − 44万円 = 6万円 )
というわけで、育休給付金ばかりを充実させないで、産休を取る妻への給付金をそこそこ充実させるべきだろう。
世間は育休ばかりを重視しているが、頭が偏りすぎている。もっとバランスの取れた発想をしてもらいたいものだ。
[ 付記4 ]
男性の育休の本来の狙いは、次のことだ。
「育児負担は女性に偏っている。これを改善して、男性の育児負担を増やすことで、女性の育児負担を減らしたい。それで少子化の問題も改善したい」
これはこれでいい。しかしこれと育休給付金とは関係がない。
(1) 男性の育児負担を増やすのは、日々に男性も育児参加すればいいのであって、別に、育休給付基金を出す必要はない。それよりは、やたらと過剰な残業を減らすことの方が有効だ。男性が定時に帰宅すれば、育児負担を分担することは可能だ。
(2) 昼間の育児負担ならば、ベビーシッター(乳母)で解決可能だ。男性はむしろ育児が下手なだけ、無用である。
したがって、必要な措置は、育休給付金ではなくて、次の二つだ。
・ 過剰な残業をなくす。
・ ベビーシッター(乳母)を雇う金を給付する。
後者では、「金を給付する」という点で、育休給付金に似ている。しかし、育休給付金と違って、「仕事を辞める」ことは要件となっていない。仕事をしていても、金をもらえるのだ。むしろ、仕事をしているからこそ、金をもらえる、と言っていいくらいだ。
( ※ 仕事をしていないのなら、自分で育児をすればいいのであって、国が金を出す必要はない。国が出すとしたら、最低限の生活費だけでいい。その意味で、月額 60万円なんて、とんでもない。)
というわけで、「育児の支援」と「育休給付金」とは、何の関係もないと言っていいほど、大きく懸け離れている。どうせ何かをするのなら、真の意味で育児に貢献する制度にするべきだろう。
( ※ ついでだが、私のお薦めは、「妻の母親をベビーシッターとして雇用することに、補助金を出すこと」だ。この件は、前に述べた。 → 別項 )
( ※ すぐ上のリンクで思い出したが、「産後ケアセンター」という案もある。これも育児負担を減らす。ただしそのコストはすごく高額だ。……これは最悪に近いね。これに比べれば、育休給付金の方がまだマシだ、と思えるくらいだ。)
タイムスタンプは 下記 ↓
↓ ↓
ただし、家族の中に育児に専念出来る人がいて労働者本人に休暇の必要が無い場合は、上記に該当しても育児休暇の取得はできません。
例えば、母親が働かずに育児を行う場合は父親が育児休暇を取る事は出来ないという事になります。(育児休暇は産後休暇とは独立して取得できますので、母親が育児休暇ではなく産後休暇として休みを取っている場合は父親が育児休暇を取る事も可能です)
http://www.roudousha.net/Child/Work3child002.html
それ、間違っているんじゃない? 私もそうではないかと思って調べたら、次のページがあった。
→ http://www.huffingtonpost.jp/2014/04/20/ikukyu-67_n_5183821.html
ここに、「厚生労働省が作成した支給額のイメージ図は以下の通り。」があって、その ※ 2 のところに、夫婦そろって取れるというふうに書いてある。
個人サイトよりは、厚労省の方が、信頼できるでしょ?
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あと、下記ページにも、きちんと説明してある。これを読んでください。
→ http://www.ikuji.tank.jp/law/douji.html
→ http://www.ikuji.tank.jp/law/doujifuka.html
実は、本項を書く前に、このページを見て、確認しておいたのだった。誤解のないよう、最初から注記しておけば良かったかも。