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【社説】

重力波キャッチ 次は「かぐら」も一緒に

 米国の研究チームが「重力波」をとらえた、と発表した。研究者も興奮するような成果だ。岐阜県に建設中の「かぐら」も来月から試験観測を始める。国際協力で新しい物理学を切り開いてほしい。

 重力波はアインシュタインがちょうど百年前に予言した。時間のずれや空間のひずみが、さざ波のように伝わる、と。このさざ波は、今回のようなブラックホールの衝突でも「陽子の大きさ千分の一ぐらいの動き」という。

 理論的には、私たちが体を動かすだけでも重力波は出る。しかし、非常に小さな変化しか起こさないので、観測は不可能だった。

 この観測に巨大で精密な重力波望遠鏡二台で挑んでいたのが、米国を中心とするチーム「LIGO(ライゴ)」だ。

 二〇〇二年から一〇年までの観測では、とらえられなかったが、性能アップのための大規模改修を終えた直後に成功した。ブラックホールの衝突という珍しい現象に間に合った。準備をしていれば、幸運の神さまが来るのだ。

 思い出すのが、岐阜県にあった観測装置カミオカンデだ。超新星爆発で生まれたニュートリノの観測に成功。小柴昌俊博士がノーベル賞を受賞した。この時も、超新星爆発というまれな現象に備えていたことが成果につながった。

 日本と欧州でも重力波望遠鏡を開発している。日本の「かぐら」はカミオカンデと同じ旧神岡鉱山の地下に建設され、来月、試験観測を始める。イタリアの「VIRGO(バーゴ)」はすでに試験観測を始めた。

 重力波望遠鏡は水平に固定されているので、真上から来る重力波は観測しやすいが、横からは難しいという。日米欧にあれば、どこから来た重力波でも逃さない。国際協力が欠かせない。

 「波」は情報を伝える。今回もブラックホールの衝突に特有の波だったという。

 観測の意義は重力波の存在を確かめただけではない。重力波天文学が誕生した。光、電磁波など天文学の観測手段は増えてきた。重力波の魅力は、これまで直接、見ることができなかったブラックホールのような天体も観測できることだ。精度が飛躍的に増せば、誕生直後の宇宙の姿も直接、観測できると考えられている。

 LIGOは別の重力波をとらえた可能性もあるという。「かぐら」にも、宇宙の謎に迫る成果を出してほしい。期待は膨らむ。

 

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