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男性も育休を取るべきだ……という風潮がある。あたかもこれに逆らうのは国賊だ、とでも言わんばかりの扱いだ。また、例の育休議員は、当初は正義の旗をかかげる旗手であるかのごときもてはやされようだった。
しかし、このような世間の風潮には、大きな勘違いがある。
第1に、国会議員の育休とは、完全な有給休暇である。具体的には、「本会議欠席届」を出して休むだけだ。
なお、出席期間の日数は、2008年は 156日間(土・日・祝も込み?)であったようだ。
→ 国会議員の勤務態度判定 衆議院本会議出欠実態・・・本邦初公開
年間 250日ぐらい働く必要のある一般国民よりも、はるかに恵まれている。
ともあれ、有給休暇と同じ扱いであるから、歳費は 100%支払われる。(そもそも減額する規定がない。単に欠席するだけだ。)
この意味で、国会議員の育休は、本来の意味の育休とは異なる。これは単に「サボって金をもらう」ことだ。
第2に、一般国民の育休とは、普通は無給である。
→ 育児休暇が無給なのは違法?適法?
働かないのだから、会社は給料を支払わない。これは当然だろう。そして、育休というものは、本来はこういうものなのだ。(不倫議員の主張するようなものは、育休ではない。)
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ただし、育休期間は無給が原則だが、その間、無収入では困る。そこで、雇用保険から、育休給付金というものがもらえる。
→ 育児休業給付金が67%へ引き上げ!今育休中は貰える?3つの注意点
ここで注意。この金額には上限があるのだ。
支給率が67%のときの支給単位期間1か月分としての上限額は286,023円、下限額は46,431円です。
( → 同上 )
つまり、どれほど高給を得ていても、もらえる金額には上限がある。国会議員みたいに多額の歳費をもらえる人の場合には、月額 286,023円ではとうてい歳費の補填にはならないだろう。
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ここから、次の結論が得られる。
「所得が多額である人の場合には、十分な育休給付金をもらえない。ゆえに、育休を取ると、大損する」
たとえば、月給110万円から、月給 286,023円まで下がってしまう。4分の1まで減ってしまう。これほどにも大損するのだ。
とすれば、こう結論できる。
「所得が多額である人の場合には、育休給付金をもらって育休を取るよりも、育休を取らずに働いて、その金でベビーシッター(または乳母)を雇う方がいい」
これが経済学的な損得に関する評価だ。
要するに、各人は自分の得意なことをやるのがベストだ。
・ 高所得の男性は、高所得の仕事をする。
・ 低所得の女性は、低所得のベビーシッター(または乳母)を勤める。
ひるがえって、その逆は馬鹿げている。
・ 高所得の男性が、ベビーシッター(または乳母)のかわりをする。
・ 低所得の女性が、高度技能の職場に応募して、失業する。
これは、「適材適所」の正反対みたいなもので、最悪だ。馬鹿げている。
そして、この馬鹿げたことを推進しているのが、今の世間だ。狂気の沙汰だろう。
くだらない男女平等やフェミニズムに染まると、経済的な合理性に反する方向を目指してしまう。さらには、これが国家規模に広がると、一国の経済が衰退する。なぜなら、上記の馬鹿げた方針では、一国の GDP が低下してしまうからだ。
( ※ 高所得者が育休を取れば、その分、生産活動がなくなるので、GDP は低下する。)
こうして、比較優位の発想から、何が正しくて何が間違いであるかが、判明する。
( ※ なお、奥さんが国会議員で、亭主が無職の場合には、亭主が育児に専念するのがベストだ。不倫議員は、無期限育休みたいになるわけで、これで男子の本懐ということだろう。)
[ 付記1 ]
比較優位については、似た例もある。
社長と秘書がいる。
・ 社長は秘書よりも経営が 10倍も上手だ。
・ 社長は秘書よりもタイピングが 3倍も上手だ。
こういうときには、次のことはダメだ。
・ 社長は経営とタイピングをする。
・ 秘書は何もしない。
社長は秘書よりもタイピングがうまい。だからといって、社長がタイピングをするべきではない。社長は何もかもやるべきではない。また、秘書を遊ばせるべきではない。
では、どうするべきか? 社長は経営に専念して、秘書がタイピングをすればいい。こうしたとき、会社全体の生産性は最適化される。
[ 付記2 ]
比較優位という概念は、経済学の概念。詳しくは、下記を参照。
→ 比較優位とは何か? (検索用の項目)
→ TPP の誤解と正解 2 (詳しい解説)
[ 付記3 ]
育児休業給付金については、注意点がある。
これは、雇用保険の対象者が対象だから、自由業・自営業・パート・アルバイトは対象外だ。国会議員もたぶん同様だろう。
→ 育児休業給付金の金額と手続きについて